III-P-53
乳児期の心臓外科手術後における副腎機能の検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学1),京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科2),京都府立医科大学集中治療部3)
河井容子1),志馬伸朗3),加藤祐子3),白石 公1),糸井利幸1),山岸正明2),浜岡建城1)

【背景】新生児期・乳児期の心臓外科手術術後急性期の合併症として副腎機能不全は重要である.小児心臓手術後の副腎機能に影響を及ぼす因子としては開心術・人工心肺の侵襲,副腎機能の未熟性や糖質コルチコイドの投与などが考えられているが,それらについて詳細に検討した報告は少ない.今回われわれは新生児期・乳児期の心臓外科手術後の副腎機能およびステロイド投与の影響について検討した.【対象および方法】2005年 1 月~2005年10月に当施設で心臓外科手術を施行した 1 歳未満の乳児26例をステロイド投与群と非投与群に分けて,術直後と術 3 日後の血清コルチゾールおよび血清ACTH値を測定し比較検討した.なおステロイド投与はおもに,術前呼吸不全や術中低血圧などの危険因子を有する症例に行った.【結果】血清コルチゾール値およびACTH値は術直後,術 3 日後で両群に有意差は認めなかった(コルチゾール値:術直後19.2 ± 13.2 vs.16.4 ± 18.9μg/dl,術 3 日後22.1 ± 5.0 vs. 34.7 ± 7.4μg/dl;ACTH値:術直後18.4 ± 5.0 vs.29.0 ± 8.3pg/ml,術 3 日後19.2 ± 5.3 vs. 23.6 ± 6.5pg/ml).しかしながら,ステロイド投与群では術後 3 日目の血清コルチゾール値が < 10μg/mlと低値を示し,副腎機能不全と考えられる症例が18名中 7 名に認められ,そのなかには血圧低下や低Na血症などの臨床症状を伴う例も認めた.これらの症例ではステロイド投与にもかかわらずACTH値の低下は認められなかった.またこれら 7 名中 5 名は新生児であった.非投与群ではコルチゾール値の低下は認めなかった.【結語】周術期に危険因子を有する例では,ステロイド投与に関わらず副腎機能低下を呈する症例が認められた.これらの症例には術後のステロイド持続補充療法も考慮すべきと考えられた.

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