III-P-54
フォンタン術後例における甲状腺機能について
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科2)
北 知子1),萱谷 太1),稲村 昇1),角由紀子1),青木寿明1),岸本英文2),川田博昭2),盤井成光2)

【背景】慢性心不全の病態評価にhANP・BNP,甲状腺機能が有用であるが心不全の成因が複雑なフォンタン循環における甲状腺機能の変化については明らかにされていない.【目的】フォンタン(F)術後の甲状腺機能を測定し各種心機能指標との関連を検討する.【対象】F術後の10例(男 7,女 3).三尖弁閉鎖 4,両大血管右室起始 3,単心室(RV type)2,エプスタイン奇形 1 であった.F術は平均 4 歳 7 カ月で施行し術後平均 4 年 4 カ月経過,8 例が心外導管を使用していた.全例NYHAは 1~2 度であった.【方法】甲状腺刺激ホルモン(TSH),遊離T3(fT3),遊離T4(fT4)を同時期に測定したhANP・BNP,また心エコー検査・心臓カテーテル検査所見や臨床状況との関係を検討した.【結果】(1)TSH 4.35 ± 2.55μU/ml,fT3 3.51 ± 0.47pg/ml,fT4 1.49 ± 0.21ng/dl.fT3およびfT4は全例正常,TSHは 2 例で高値であった.(2)心エコー検査で中等度以上の房室弁逆流を認める例で有意にTSHが高かった(p < 0.05).また上室性頻脈発作既往のある 1 例でTSHが高値であった.(3)hANP(21.7 ± 12.0pg/ml)はfT3と弱い負の相関関係(R2 = 0.59,p < 0.05)にあったが,BNP(10.9 ± 4.7pg/ml)は甲状腺機能との関連を認めなかった.(4)心臓カテーテル検査ではTSHがEDP(6.1 ± 2.3mmHg)と弱い正の相関関係(R2 = 0.46,p < 0.05)がみられ,特に 6mmHg以上の症例で有意に高値であった.CVPやEF,SpO2とはいずれも有意な相関がみられなかった.TSH高値の 2 例に着目するとEDPやCVPが高くEFが低い傾向にあった.【まとめ】今回の対象症例の甲状腺機能はおおむね正常範囲であったがTSH高値例では心機能低下や不整脈との関連が示唆された.今後対象症例を増やして報告する.

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