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フォンタン術後のチアノーゼに対するアプローチ―QOL向上を目指して―
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2)
渡辺まみ江1),山村健一郎1),森鼻栄治1),永田 弾1),宗内 淳1),岸本小百合1),大野拓郎1),落合由恵2),井本 浩2),瀬瀬 顯2),城尾邦隆1)

フォンタン手術(F術)後のチアノーゼは患者のQOLを低下させる.われわれはこれまで,F術後チアノーゼの原因となるfenestration,VV-collateral,肺動静脈瘻(PAVF)を検討し,危険因子として多脾症,TCPSの既往,肝静脈血の肺血流分布差があり,検出法としてコントラストエコーが有用なことを述べた.今回残存チアノーゼ改善の取り組みを検討した.【目的】F術後のチアノーゼに対し治療介入した症例を検討する.【対象】2003~2006年の 4 年間に治療介入したF術後患者17名.心形態はHLHS 3,MA or Strad MV 3,C-TGA 2,CAVV 1などで,年齢は3.1~22.7歳.術式はlateral tunnel(LT)法 2,心外導管法15で,術後観察期間は0.18~12.8年だった.【方法】対象の(1)チアノーゼの原因(2)heterotaxiaの有無とTCPSの既往(3)原因の検索方法(4)治療内容と時期(5)治療前後のSpO2の経過を検討した.【結果】(1)VV- coll 13,PAVF 4,fenestration 1,LT leak 1(2)無脾症 1,多脾症 5(29%)例中 3 がTCPS既往.(3)血管造影とカテ中のコントラストエコーは全17例へ施行,肺血流シンチ14,三次元CT 6のほか,SpO2から病変を疑った10例に先行して外来で末梢コントラストエコーを行った.(4)VV-collに対して全例にcoil塞栓術,fenestration,LT leakの 2 例に外科的閉鎖術,TCPC完成後チアノーゼの悪化がみられたTCPS既往の多脾症 2 例は,肝血流の左右差とPAVFを確認し,心外導管のre-directionを行った.治療時期はF術後19日~12.2年.(5)SpO2は治療前後で平均90.6→95.5%と上昇した.coil塞栓例93.0→96.2%,leak閉鎖例87→94%でre-directionの 2 例は81→93.5%と特に改善が著しかった.【結語】F術後残存するチアノーゼの治療として,coil塞栓術,R-L shuntの外科的閉鎖術は有効で,将来的にはAmplatzer閉鎖栓の応用も期待される.TCPS既往の多脾症はPAVFのリスクが高く,TCPS術後早期に,左右肺への均等な肝血流分布を得るTCPCの完成が重要である.

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