A-I-1
心カテと肺生検による完全型房室中隔欠損症の治療戦略
神奈川県立こども医療センター循環器科
中本祐樹,後藤建次郎,柳 貞光,上田秀明,林 憲一,康井制洋

【背景】完全型房室中隔欠損症(cAVSD)において肺高血圧の遷延は術後管理を難渋させる.従来は手術適応があれば一期的に根治手術(ICR)を行ってきたが,近年,肺動脈絞扼術(PAB)を先行させ同時に肺生検を行い最終的な治療方針を決定している報告が散見される.【目的】肺血管病変の重症度を確実に評価し,術後管理に難渋しないcAVSDの治療指針を検討する.【方法】2004年 1 月 1 日~2006年12月31日の 3 年間に当センターで手術を行ったcAVSD患者(unbalanced ventricleを除く)21例の心カテおよび肺生検所見,手術成績をretrospectiveに検討した.一期的にICRした症例をA群,初回手術はPABを行い二期的にICRした症例をB群とした.【結果】A群10例,術前Rp 2.5 ± 1.2,ICR時期5.6 ± 4.2カ月.B群11例,PAB前Rp 3.8 ± 2.6,PAB時期4.3 ± 3.5カ月,肺生検診断は全例術後臨床経過区分AまたはB,ICR前Rp 3.0 ± 1.5,ICR時期14.3 ± 12.3カ月.術後PH crisisはA群 2 例,B群なし.【考察】術後PH crisisを生じた症例は,1 例は術前心カテからICRまで 2 カ月経過しており,この間に肺血管病変が進行した可能性があった.もう 1 例は初回心カテが10カ月時で,この 1 例を除きA群では初回心カテは生後 4 カ月以内に行われていた.A群のICR前Rpは全例 5 未満であった.初回心カテ評価は生後 4 カ月以内,手術直前に行い,Rp 5未満は一期的にICR可能,Rp 5以上あるいは初回心カテが生後 4 カ月を過ぎた症例ではPABと肺生検を行い,肺生検診断で手術適応があれば近接でICR可能と考えられた.【結論】心カテと肺生検診断を組み合わせた確実な予測のもとで,時期を逸することなく手術を行うことが重要である.PHのあるcAVSDは生後 4 カ月以内に心カテ評価し初回の外科的治療を行うのがよい.

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