A-I-2
完全型房室中隔欠損に対する心室中隔欠損直接閉鎖法の中期成績
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),小児循環器内科2)
西垣恭一1),康 雅博1),川平洋一1),小澤秀登1),村上洋介2),江原英治2),鈴木嗣敏2),川崎有希2)

【背景】われわれは2000年 4 月以降,完全型房室中隔欠損症修復術において,心室中隔欠損孔の深さが 7mm以下の症例に対し心室中隔欠損直接閉鎖法を採用してきた.本法の適応および中期成績はいまだ明確ではない.【対象】2000年 4 月以降手術を行った完全型房室中隔欠損症単独例20例中,本法を 7 例に採用した.手術時年齢 2~9 カ月(中央値 4 カ月),体重2.8~5.4kg(同4.0kg).Down症候群合併が 4 例.カテーテル検査データは平均肺動脈圧25~48mmHg(同35mmHg),肺血管抵抗2.8~8.2Um2(同4.8Um2),左室拡張末期容積85~142%(同128%),右室拡張末期容積128~228%(同158%)であった.房室弁形態はRastelli分類A型 5 例,C型 2 例.【手術】心室中隔欠損孔の深さがおよそ 7mm以下であることを確認した.4-0ネスポーレンプレジット付きマットレス針をcrestの右室側にかけ,前後尖を貫通させ心房側に抜いた.次にePTFE人工血管(4 例)あるいはダクロンパッチ(2 例)から作成したストリップにその針を通し,房室弁を前後方向に補強縫縮した.共通前後尖の間にconnecting tongueを有する症例でストリップを使用せず.左側房室弁のappositionに対して 6 例で縫合を加え, 1 例で放置した.心房中隔欠損は,4 例で先ほどの房室弁輪に用いたストリップを利用して閉鎖,3 例で自己心膜パッチを用いて閉鎖した.【結果】心停止35~48分(中央値38分),体外循環70~102分(同91分),ICU滞在期間 2~8 日(同 5 日)であった.死亡なし.術後経過観察期間は最長 6 年 5 カ月.術後心臓超音波検査でmoderate以上の房室弁逆流,心室中隔交通遺残,左室流出路狭窄を認めた症例はなかった.2 年以上経過した 3 例で無投薬であった.【結語】心室中隔欠損孔の浅い症例に対する心室中隔欠損直接閉鎖法は,修復手術の質を低下することなく簡素化できる有用な術式である.

閉じる