B-I-15
先天性心疾患(CHD)術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)に対する治療方針
岡山大学小児科1),心臓血管外科2),麻酔科蘇生科3)
堀川定儀1),大月審一1),岡本吉生1),日置里織1),船田裕昭1),山内 泉1),森島恒雄1),佐野俊二2),石野幸三2),笠原真悟2),竹内 護3)

【目的】CHD術後のPLEは生命予後に関わる重要な合併症であるが,その治療法は確立されておらず治療に難渋することも多い.当施設でのPLE症例の治療法について後方視的に検討した.【対象】当施設でCHD術後PLEを合併した 7 例(Fontan術後 6 例,Rastelli術後constrictive percardtis 1 例).診断時年齢;中央値 7 歳 9 カ月(3 歳~34歳 5 カ月),術後からの発症までの期間;中央値 3 年 2 カ月(8 カ月~5 年10カ月),観察期間;中央値 4 年 1 カ月(5 カ月~6 年 4 カ月).【結果】(1)Fontan術後PLE症例と非発症例との比較検討:Fontan術後のPLE発症;185例中 6 例(3.2%).PLE発症例 vs 非発症例でCVP;14.9 ± 2.9 vs 10.2 ± 2.4mmHgと発症例で比較的高値であった.PAR;1.6 ± 0.7 vs 2.0 ± 1.1単位,心室の駆出分画;69 ± 9 vs 70 ± 11%,ともに明瞭な差はなかった.(2)PLE症例の治療法:〈外科的治療〉 7/7例(開窓術 5 例,横隔膜縫縮術 1 例,心膜切除術 1 例).発症後治療介入時期;中央値 2 カ月(14日~9 カ月).治療介入時期は診断後比較的早期であった.外科的治療前後のCVP;16.0 ± 3.0→12.2 ± 1.7mmHgと有意に低下した(p = 0.04).治療中カテーテル治療を追加した例;2/7例(LPA stent留置術 1 例,開窓部再狭窄BAP 1 例).〈内科的治療〉6/7例で実施.内訳はheparin 6/6例(10,000~20,000U/m2/day),prednisolone 4/6例(0.35~0.75mg/kg/day),somatostain 2/6例(50,150μg/day), pimobendan 3/6例(0.05~0.07mg/kg/day),bosentan 1/6例.(3)治療効果:〈血中Alb値〉発症時平均2.4g/dl→治療後平均3.8g/dlと改善.ただし1/7例は治療抵抗性で連日Alb投与が必要.〈退院率〉70%(5/7例;うち 1 例は外科的治療のみ).【考察】過去の報告同様,高CVP値の持続がPLE発症の危険因子であることが示唆された.当施設では可能な症例ではまず早期に外科的に圧解除を行い,発症原因の 1 つを軽減し環境を改善したうえで内科的治療を組み合わせることで難治症例でも比較的良好な経過を得ている.

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