P-I-1
胎児診断された総肺静脈還流異常症における肺静脈狭窄所見の検討
宮城県立こども病院循環器科
田中高志,松木茂伸,田澤星一,小野寺隆

【背景】胎児期においては肺血流が少ないため,総肺静脈還流異常症の診断がついても肺静脈狭窄(PVO)の程度の判断は困難なことが多い.【目的】今回当院で胎児期に診断した総肺静脈還流異常症の 4 例において生後の所見と比較検討し,胎児における肺静脈狭窄の診断の可能性について検討した.【結果】1 例目はIII型で肺静脈の形態および血流が共通肺静脈腔から門脈まで追跡可能であり,血流速度も遅く呼吸性変動が大きくみられた.生後PVOがないことが確認されたが門脈に還流するタイプであったため生後翌日修復術を行い以後経過良好である.2 例目は肺動脈閉鎖症,共通房室弁に合併しており,胎児エコーで左上大静脈に還流する手前で左肺動脈と交差する箇所でカラードプラで乱流を認め,0.9m/sの呼吸性変動の少ない連続性の血流を認めた.生後同部で血流速度2m/sとなるPVOを認め,軽度の肺うっ血あり生後翌日修復術とシャント手術を行い経過良好である.3 例目も肺動脈閉鎖,共通房室弁に合併した症例で,胎児エコーで右上大静脈に還流する手前で細い乱流となる血管を認め,1.5m/sの呼吸性変動の少ない連続性の血流を認めた.肺静脈の経路は細く,全長にわたっては追跡できなかった.生後共通肺静脈腔はあったもののほぼ肺静脈閉鎖の状態で肺のlymphangiectasisも強く酸素化が悪い状態が続き,生後翌日手術を行ったが死亡した.4 例目は単心室に合併した症例で左房に還流する血管を認めず,共通肺静脈腔もなく肺静脈と思われる血流を見つけることができず,生後はやはり肺静脈閉鎖と診断され,肺のlymphangiectasisが強く酸素化が極端に悪いまま間もなく死亡した.【考察】胎児エコーにおいても肺静脈狭窄の診断はある程度可能と思われる.形態診断が重要ではあるが,生後と同様に肺静脈血流の速度と血流パターンによっても重症度が推定できる可能性があるがさらなる検討が必要と思われた.

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