P-I-2
母体抗SS-A抗体陽性妊娠に伴う胎児心筋病変を疑わせた 3 症例
埼玉医科大学小児心臓科1),産婦人科2)
竹田津未生1),岩本洋一1),石戸博隆1),松永 保1),先崎秀明1),小林俊樹1),三木明徳2),西林 学2),板倉敦夫2)

近年,母体抗SS-A抗体陽性妊娠において,房室ブロック以外の心病変の報告が散見される.母体抗SS-A抗体陽性妊娠に伴う胎児心筋病変を疑わせる 3 例を経験したため,治療と臨床経過について報告する.【症例 1】在胎21週より完全房室ブロック(CAVB),31週心嚢水出現のため紹介.受診時心室心拍(HR)49,心筋肥厚,全周性心嚢水あり.母体リトドリン投与によりHR 60台で経過.生後,プロプラノロール投与下HRは60台であったが,心収縮低下と動脈管開存に伴う心不全のため日齢 5,動脈管結紮術,ペースメーカ挿入術を施行.日齢72,BNP 150,心収縮不良のためチモペンタン内服にて退院.10カ月時にも心機能の改善はなく,エナラプリルも開始された.【症例 2】在胎24週に前児(症例 1)がCAVBのため紹介.27週より心嚢水が出現し母体ベタメサゾン4mg投与開始,いったん心嚢水は消失したが,29週より全周性の心嚢水となり,心筋肥厚,心室中隔の心内膜輝度の上昇が順次出現,これらの病変は31週より軽減.出生時,心室中隔の心内膜輝度上昇と収縮軽度低下,BNP 115,CK 1,736であったが,数日の経過で正常化.生後,低血糖,哺乳力低下のためステロイド補充療法を要した.【症例 3】在胎22週より2:1 AV block,23週よりベタメサゾン 4mg投与が開始されたがCAVBに進行,34週当院紹介.HR90-100,心嚢水,心筋肥厚,左室心内膜輝度上昇がみられた.35週より心筋肥厚は軽減.出生時心室中隔収縮低下,心内膜輝度上昇,BNP 1,215.出生後 1 週間で心収縮,心内膜輝度が順に正常化.出生後低血糖,哺乳力低下のためステロイド補充療法を要した.【考察】抗SS-A抗体陽性妊娠では報告されている心病変は一般に重度・致死的なものが多いが,やや軽度の心筋病変も存在すると思われる.母体へのベタメサゾン投与が有効な可能性があるが,出生後にステロイド離脱症状を呈する場合があり,治療量,期間について検討を要すと考えられた.

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