P-I-5
小児および成人の肺動脈性肺高血圧症例におけるボセンタンの臨床的有用性
東邦大学大森病院小児科
中山智孝,池原 聡,嶋田博光,松裏裕行,佐地 勉

【背景】エンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタン(BOS)が2005年 7 月に承認された.これでPGI2,NO,ETの 3 つのpathwayを標的とした薬剤が本邦でも使用可能となった.小児および成人に対するBOSの有用性について検討したので急性および中期成績を報告する.【対象と方法】BOSを投与した肺動脈性肺高血圧(PAH)患者13例.年齢は 8~58歳,中央値18歳.疾患はIPAH 8 例,CHD-PAH 4 例(DORV術後,VSD術後,未手術ASD,未手術AP-window),強皮症-PAH 1 例.WHO functional class(FC)はII 4 例/III 8 例/IV 1 例.併用薬はベラプロスト 8 例,エポプロステノール 5 例,シルデナフィル10例.心エコーを用いた 3 時間後の急性効果,3 日後の 6 分間歩行距離(6MWD),中期成績(6MWD,血漿BNP,心エコー)を評価した.【結果】(1)急性効果:心拍数は77 ± 11→81 ± 11bpm,収縮期体血圧は103 ± 11→106 ± 10mmHgと不変.LVDD,TRPG,AcT/ETやE/Aは不変.RV Tei indexは0.76 ± 0.35→0.71 ± 0.32(ns),LV Tei indexは0.58 ± 0.19→0.48 ± 0.23(p = 0.02)と有意に低下した.開始 3 日後の6MWDは418 ± 112→451 ± 104mと33m改善.(2)中期成績:1)3 カ月後の6MWDは448 ± 85→477 ± 83mへ,血漿BNPは290 ± 281→220 ± 241pg/mlへ改善傾向を示したが,TRPGは108 ± 24→105 ± 34mmHgと不変.2)強皮症症例のFCはIV→II,推定右室圧は72→28mmHg,BNPは741→24pg/mlへ著明に改善.3)血漿ET-1濃度(pg/ml)はBOS投与前1.60 ± 0.66→6 カ月後2.18 ± 0.86(p = 0.01)へ有意に上昇した.しかし血漿ET-1濃度からBOS投与後の臨床効果を予測することは困難であった.4)有害事象:エポプロステノール + シルデナフィルにBOSを追加投与した 3 例では心不全の増悪により中止.【結論】BOS投与により早期からBNPや6MWDが改善傾向を示すが,肺動脈圧の低下は十分でなかった.シルデナフィルとBOSの併用については長期観察ならびに薬物相互作用の検討が必要と思われる.

閉じる