P-I-8
ダウン症のEisenmenger症候群に対するボセンタンの有効性
社会保険紀南病院小児科1),和歌山県立医科大学小児科2)
南 孝臣1),濱 武継1),渋田昌一2),末永智浩2),武内 崇2),鈴木啓之2),吉川徳茂2)

【はじめに】ボセンタンのEisenmenger症候群に対する有効性が報告されているが,検索した範囲でダウン症での文献はない.今回,先天性心疾患を合併したダウン症のEisenmenger症候群にボセンタンを投与した 2 症例を報告する.【症例 1 】36歳,女性.出生時にダウン症,心室中隔欠損症(VSD)と診断.5 歳時に手術を勧められるも同意せず.33歳時に心拡大とチアノーゼのため,furosemide,digoxinの内服と在宅酸素療法(1l/分)を導入されたが,徐々にチアノーゼが増強,36歳時に酸素 3l下でも,軽い移動でSpO2 60~70%となるため当科に入院.ボセンタン62.5mg分 2 で開始し,4日後に125mg分 2 に増量した.導入14日後の 6 分間歩行距離は200mから215mへ改善.心エコー上,右室流出路の加速時間(AcT)/駆出時間(ET)は0.27から0.29へと軽度上昇.BNPは111から38.3pg/mlに低下,SpO2,移動時も80%台となった.【症例 2 】:32歳女性.生後 3 カ月にダウン症と診断.先天性心疾患を指摘されたが通院せず.5 歳時,VSD,動脈管開存と診断されるも,肺高血圧のため手術適応なし.furosemide,spironolactone,digoxinの内服で経過観察.21歳からberaprostを追加.27歳で在宅酸素療法を導入.32歳からチアノーゼが増強し,這って動くことが多くなり,当科に入院.beraprostを中止,ボセンタンを開始した.導入15日後の 6 分間歩行距離は200から220mへ改善.AcT/ETは0.32から0.36に上昇した.BNPは10.2から9.8pg/ml,SpO2は80%台で著変なかったが,自覚的には楽になった.2 例ともAST,ALTの上昇はなかった.【まとめ】カテデータはなく評価としては不十分だが,今回の指標の範囲では,ダウン症のEisenmenger症候群にボセンタンは有効であると考えられた.

閉じる