P-I-9
当院におけるportopulmonary hypertension(PPHTN)に対するcombination therapyの経験
大阪大学小児科
前川 周,小垣滋豊,市森裕章,成田 淳,那須野明香,高橋邦彦,吉田葉子,大薗恵一

【序言】肺高血圧に対し,近年PGI2持続静脈内投与に加えてbosentanが保険適応となり,PPHTNの治療も選択の幅が増加している.最近当院で経験したPPHTNの 3 例について検討した.【症例 1】15歳男児.1 歳時に肝外門脈閉塞症と診断.9 歳時に失神あり,PPHTN〔平均肺動脈圧mPAP(61mmHg),肺血管抵抗PVRI 11.9U/m2〕と診断された.12歳時から夜間酸素吸入を開始.13歳からPGI2持続静注療法を導入.14歳時にはmPAP(45),PVRI 7 まで改善した.bosentanによる急性効果を認め,投与を開始したが,開始 5 日目に大量下血があり中止した.15歳現在,mPAP(42),PVRI 5.8とさらに改善がみられ中学に通学している.【症例 2】15歳女児.1 カ月時胆道閉鎖症に対し葛西術施行.12歳時心電図異常を指摘され,PPHTNと診断〔mPAP(51),PVRI 7.6〕.肝移植を目指してPGI2持続静注療法開始し,さらにbosentan追加投与によりmPAP(38),PVRI 5.4まで改善した.15歳時に生体肝移植施行.IVC declamp時にmPAPが一時的に上昇したが,移植終了時にはmPAP(33)であった.術後もPHの増悪はなく経過したが,グラフトの生着が悪く,術後26日に死亡した.【症例 3】16歳男児.6 歳時に静脈管開存症と診断され手術施行.9 歳時にPPHTNと診断.10歳時mPAP(58),PVRI 21.3であった.PGI2の経口内服に加えて,15歳時よりbosentanを開始.現在NYHA 2~3 で高校に通学している.【結語】PPHTNは予後不良であるが,作用機序の異なるPGI2とbosentanを併用することにより予後をさらに改善できる可能性がある.PPHTNへの治療介入時期など今後さらに検討すべきである.

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