P-I-11
冠動脈病変をもつ川崎病患者の頸動脈のelastic propertyの検討
久留米大学小児科1),久留米大学循環器病センター2),聖マリア病院小児循環器科3)
石井治佳1),須田憲治1),伊藤晋一1),籠手田雄介1),岸本慎太郎1),西野 裕1),工藤嘉公3),家村素史2),松石豊次郎1)

【目的】冠動脈病変をもつ川崎病若年成人患者における頸部血管変化を頸動脈エコーで検討すること.【方法】対象は,年齢18~26歳.A群:川崎病冠動脈瘤患者13人.B群:川崎病既往歴のある冠動脈病変のない患者10人.C群:コントロール群で疾患のない29人.A,B群は川崎病発症から15 ± 4 年経過している.頸動脈エコーで右頸動脈の収縮期径(Ds)と拡張期径(Dd)と内膜の厚さ(IMT)を測定.同時に上腕で収縮期血圧(BPs),拡張期血圧(BPd)を測定.これらの計測値から血管の硬さ(stiffness)と拡張性(distensibility)を,次式で計算した.stiffness = Ln(BPs / BPd)/(Dd-Ds)/ Dd.distensibility = (Ds/22-(Dd/2)2 × 107 /(Dd/2)2 ×(BPs - BPd)× 1333kPa -110-3.本検査の 1 カ月以内に,血液採取しTC,HDL,LDLを測定した.【結果】IMT,Ds,Ddは 3 群間で有意差なし(A;mean ± standard deviation = 0.41 ± 0.08,B;0.37 ± 0.09,C;0.43 ± 0.06mm),(A;Ds/Dd = 7.0/6.3,B;7.1/6.2,C;6.7/5.9mm).BPsはB,Cに比べてAが有意に高値(A;122 ± 11,B;111 ± 15,C;109 ± 11mmHg,p < 0.03).BPdはA,Bに比べてCが低値(C;66 ± 9,A;66 ± 9,B;61 ± 9mmHg).しかしながら,stiffnessはB,Cに比べてAが有意に高値(A;5.5 ± 2.0,B;4.3 ± 1.5,C;3.7 ± 1.1,p < 0.003).distensibilityはB,Cに比べてAが有意に低値(A;37 ± 16,B;53 ± 26,C;57 ± 21kPa-110-3,p < 0.02).A群はACE inhibitorやARBは内服していない.3 群間で年齢に有意差はなく(A;20.7 ± 4.5,B;18.1 ± 6.2,C;20.7 ± 2.7歳),TC,HDL,LDLも有意差はなかった.【結論】冠動脈病変をもつ川崎病若年成人患者は,コントロール群に比べ血圧が高く頸動脈血管壁は硬く拡張性に乏しかった.このelastic propertyの変化が壮年期の脳心血管病の基礎となるのか,薬物療法などがこれを改善させ得るのか,今後検討が必要である.

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