P-I-12
川崎病後体血管床mechanical propertyの経時的変化
埼玉医科大学小児心臓科
石戸博隆,先崎秀明,岩本洋一,松永 保,竹田津未生,小林俊樹,天貝友美,伊東志乃,金子英理,小高千夏,宮田佳代

【背景】川崎病は,冠動脈のみならず全身の血管炎であり,急性期の炎症が遠隔期の種々の血管床機能に影響を及ぼしている.われわれは以前,川崎病後患者の大動脈input impedanceの解析から,形態上は正常な遠隔期体血管壁に質的異常があることを報告したが,今回その経時的変化について検討したので報告する.【方法】川崎病後冠動脈病変を呈し,follow upカテーテル検査を施行した患者 7 例において,上行大動脈圧と流速の同時計測から得られたinput impedanceと,大動脈引き抜き圧曲線から求めた脈波伝播速度(PWV)とから,体血管床の変化につき検討した.【結果】経過観察期間は 1~6 年(平均4.1 ± 2.1年)で,2 例は病変形態不変,2 例は瘤縮小傾向,3 例で形態上の正常化をみた.初回検査時,特性抵抗,PWVで示される大動脈近位部壁硬度,末梢動脈stiffnessはともに,小短絡VSDの患者を正常対照として得られた年齢予測値を上回り(それぞれ正常の138,131,120%),前回報告同様,大動脈近位部および末梢血管の壁硬度の増加が示唆された.follow up時,年齢補正をした特性抵抗,PWV,抹梢動脈stiffnessはすべて初回時の値と有意差なく,したがってfollow up時の年齢予測値を上回り,体血管壁硬化の持続が示唆された.【考察】川崎病後の体血管床質的異常は,冠動脈病変形態の変化とは無関係に長期に継続する可能性が示唆され,さらなる遠隔期経過観察の必要性と,関連し得る心血管事故発生について観察が必要であると思われた.

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