P-I-13
冠動脈後遺症のない川崎病後患者の脈波伝播速度(PWV)
埼玉医科大学小児心臓科1),小児心臓外科2)
中川 良1),先崎秀明1),石戸博隆1),松永 保1),竹田津未生1),小林俊樹1),加藤木利行2),佐藤美恵子1),岩崎美佳2),枡岡 歩2),小高千夏1)

【背景】われわれはこれまで,冠動脈病変を呈した川崎病遠隔期の患者において,カテーテル検査時の詳細な検討から,冠動脈病変の形態上の変化とは無関係に,体肺血管床に質的異常が存在することを明らかにしてきた.今回われわれは,急性期に冠動脈後遺症を残さずカテーテル検査が適応にならない川崎病後の患者において,tonometryを利用した脈波伝播速度(PWV)を測定し,その動脈壁硬度について検討した.【方法】急性期に冠動脈後遺症を残さなかった川崎病後患者71名(3~19歳,中央値 9 歳,平均観察期間8.4 ± 4.2年)と心雑音,心電図異常,胸痛,心拡大を主訴に当院を受診し,正常と診断された小児61名(3~18歳,中央値 8 歳)を対象に,四肢のtonometry(フクダ電子社製)からPWVを測定し比較検討した.【結果】われわれのこれまでの報告どおり,正常児PWVは年齢増加に従い有意に増加した.年齢を考慮に入れて川崎病群とのPWVを比較(共分散分析)すると,年齢ごとの群間平均(offset分)には有意差を認めなかったが,川崎病群のPWVの年齢による増加率(group*年齢)は正常群に比し有意に高い値を示した(p < 0.05).【考察】川崎病後の約80%の症例は冠動脈後遺症を残さない.今回の検討ではこのような川崎病罹患後の大半を占める患者群においても体表面から測定した体動脈壁硬度は正常児に比し有意に上昇していることが示された.今後,これらの長期にわたる変化と関連ある心血管事故とのかかわりに関し長期の観察を要すると思われた.

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