P-I-14
川崎病による右冠動脈局所性狭窄に対する血行再建術の介入の是非と介入時期について
国立循環器病センター小児科1),放射線科2)
津田悦子1),木村晃二2),小林奈歩1),脇坂裕子1),堀田智仙1),越後茂之1)

川崎病(KD)遠隔期にみられる右冠動脈(RCA)の局所性狭窄(LS)の進行に対して,血行再建術を施行するかどうか,いつ施行するかについては,その決定に難渋する.完全閉塞(OC),セグメント狭窄(SS)の出現時期と症状出現の有無について後方視的に検討することにより,血行再建術の介入の是非と介入時期について考察した.【対象と方法】対象は,KDによる冠動脈障害のため当院で冠動脈造影(CAG)を施行し,RCAOC,SSと診断した123例である.KD発症からRCAOC,SSまでの期間,症状出現の有無について検索した.また,経過中CAGでLSが確認され,その後OC,SSに至った症例18例についてLSの出現時期,LS出現からOC,SSまでの期間についてみた.【結果】有症状は,19例(16%)で,うち死亡は 1 例,心肺蘇生 3 例,カテーテル治療(PCI)2 例であった.時期は 2 年以内12例(63%),2 年以上 5 年以内 2 例,5 年以上 5 例であった.無症状群のうち,初回CAGでOC,SSと診断された45例において,その時期は 2 年以内20例(41%),2 年以上 5 年以内12例,5 年以上13例であった.2 回以上CAGが施行された59例では,2 年以内24例(44%),2 年以上 5 年以内16例,5 年以上19例であった.経過中LSが確認された18例のうち死亡は 1 例で,50%LSであった.この症例は完全房室ブロックを来した.LSに対してPCIを施行した 2 症例は遠隔期に閉塞に至ったが,無症状であった.KD発症後 5 年以内に75%以上のLSが出現した 5 症例は,その後 5 年以内にOC,SSに至り,無症状であった.KD発症 5 年以上経過後75%以上のLSが出現した 4 例では,LSの出現からOCに至るまでの期間は13~15年で,無症状であった.【まとめ】RCA閉塞は,KD発症後 2 年以内が45%を占めた.発症早期の閉塞時期の予測はしがたく,待機的血行再建術の介入は難しい.KD発症後 5 年以降に出現した有意狭窄は無症状の閉塞に至るまで,十数年の経過がみられた.血行再建術を施行する場合は,この時期に考慮すべきである.

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