P-I-16
小児における冠動脈異常冠動脈洞起始症の臨床症状および治療方針の検討
トロント小児病院循環器科
大崎真樹

【背景】左冠動脈右冠動脈洞起始および右冠動脈左冠動脈洞起始(anomalous origin of coronary artery from the opposite sinus of Valsalva,以下AOCA)はまれな冠動脈奇形であり突然死との関連が報告されているが,手術適応を含めて管理方針はいまだに確立されていない.【目的】小児におけるAOCAの臨床症状,検査所見,予後等を検討し最適な治療方針を探る.【方法および対象】1994年から2006年までにトロント小児病院にてAOCAと診断された児について後方視的に検討.【結果】期間中AOCAと診断されたのは31名(男児25,女児 6).診断時中央年齢は6.2歳(0~16歳).10例(32%)は臨床症状を呈し(運動時意識消失 7,胸痛 1,動悸 2),残り21例(68%)は無症状で心エコー検査時に偶然診断されていた.31例中13例は左冠動脈右冠動脈洞起始.29例で安静時ECGは正常範囲内,運動負荷試験は13名に試行されたが虚血変化を示したのは 1 例のみ.DSEを施行された17名中,壁運動異常を示したものはなかったが,2 例はECG異常を示し 4 例はカラーDopplerで冠動脈異常flowを認めた.急性症状を呈した 2 名(ショック)および臨床検査で心筋虚血を示した 5 名の計 7 名が外科的治療を受けた.うち 1 名が術後早期に死亡.フォロー期間中(55カ月),経過観察群にも外科的治療群にも突然死や虚血を示唆する臨床症状はなかった.【考察】多くのAOCAは無症状であり安静時ECG,運動負荷試験とも正常であることが多い.DSEはハイリスク群を検出するのに有用な可能性がある.今回の追跡期間内では突然死などのイベントはなく,無症候性AOCAは保存的に観察し得ると考えられる.外科的治療と保存的管理を比較するため,より長期的なフォローアップstudyが必要である.

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