P-I-17
左冠動脈肺動脈起始症修復術の中長期成績の検討
岡山大学心臓血管外科1),小児科2)
藤井泰宏1),笠原真悟1),大島 祐1),吉積 功1),石野幸三1),佐野俊二1),大月審一2),岡本吉生2)

【背景】左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)は修復術後に心機能改善と僧帽弁逆流(MR)改善を得られることが多いが,術前の虚血性組織障害が改善した心機能,僧帽弁機能に与える長期的影響は不確定である.当院の小児ALCAPA修復術症例を検討した.【対象】1995年 6 月~2006年11月に修復術を施行したALCAPA 14例.年齢中央値5.2(1.8~57.9)カ月,10例が 1 歳未満であった.術前心停止が 1 例.【結果】術前LV volume 166 ± 35% of normal,fractional shortening(FS)26 ± 13%,CTR 64 ± 7%,MR 4 度 4 例,3 度 2 例,2 度 3 例,1 度 4 例,trivial 1 例.再建手技は左冠動脈移植術 9 例,竹内法 5 例.僧帽弁交連部弁輪縫縮を 4 例に施行した.術前心停止した 1 例は人工心肺離脱せず,7 日間ECMOで循環補助した.平均観察期間は49(2~139)カ月,死亡・再手術はなく,術後NYHAは全例 1 度であった.術後LV volume 120 ± 23% of normal,FS 46 ± 20%,CTR 54w 7%と全例で改善を認め,心機能再増悪は認めなかった.術後MRは 2 度 5 例,1 度 2 例,trivial 3 例,なし 4 例と全例で改善を認めた.術後100カ月以上経過した術前MR 4 度の 3 例のうち,2 例でMR 2 度残存を認め,内服加療を続行している.うち 1 例はMRの再増悪傾向を認めた.2 例ともCAG正常,心筋シンチで安静時血流低下,心USで心内膜肥厚と乳頭筋の輝度上昇を認め,術前の虚血性心筋・乳頭筋障害の影響が疑われた.【結語】ALCAPA修復術の中長期成績は非常に良好だが,重度MR症例では僧帽弁輪縫縮術を同時施行してもMRが残存する症例があり,虚血性乳頭筋障害が長期的に僧帽弁機能を障害する可能性が示唆された.

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