P-I-18
巨大冠動脈瘤に対する抗凝固療法中に卵巣出血を合併し,その後冠動脈バイパス術を経て正常分娩に至ることのできた川崎病後遺症の 1 例
愛媛県立南宇和病院小児科1),愛媛大学小児科2),国立循環器病センター小児科3)
高田秀実1, 2),檜垣高史2),山本英一2),松田 修2),中野威史2),村上至孝2),太田雅明2),長谷幸治2),村尾紀久子2),津田悦子3)

症例は22歳の女性.4 歳 5 カ月時に川崎病に罹患し,第 4 病日からγグロブリン大量療法(400mg/kg × 5 日間)とアスピリン投与を受けた.第16病日に心臓超音波検査にて左冠動脈(seg 5~6,seg 11)に径10mmの巨大冠動脈瘤を認めた.以後アスピリン,ペルサンチン,ワルファリンの投与を受けていた.15歳時の冠動脈造影検査ではseg 5に径36mm × 20mmの瘤を認めていた.PT値は20~40%の間でコントロールされていた.16歳時に突然の背部痛が出現し,貧血(Hb:7.9g/dl)を指摘された.腹部超音波検査,腹部CTにより左卵巣出血と診断された.輸血およびワルファリンの一時的な中止,安静のみで出血は収まった.18歳時に 2 回目の卵巣出血を起こした.Hb:7.2g/dlと著明な貧血を認め,プレショック状態であった.前回と同様の保存的治療で軽快した.2 回の出血ともに排卵周期に一致したものであることより,経口避妊薬による排卵抑制を行った.それ以後は卵巣出血を起こすことなく経過した.19歳ごろより労作時胸痛を認めるようになり,冠動脈造影検査にて左冠動脈瘤近位部に99%狭窄を認めた.20歳時に冠動脈バイパス手術を施行された.術後はワルファリンを中止し,アスピリンのみで経過観察されていた.22歳で妊娠し自然分娩にて児を出産した.川崎病後巨大冠動脈瘤に対してワルファリン投与が必要な女性においては妊娠,出産は大きな問題である.また狭窄病変に対するバイパス術の至適時期の決定も難しい.われわれは巨大冠動脈瘤を合併した川崎病後遺症例を長期にわたって経過観察し,ワルファリンの合併症を乗り越え,狭窄病変に対して至適時期にバイパス術を受けることができ,無事出産に至った症例を経験したので報告する.

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