P-I-19
Heterotaxyにおける肝静脈還流異常の評価について
岡山大学小児科1),心臓血管外科2),麻酔科蘇生科3)
山内 泉1),大月審一1),岡本吉生1),日置里織1),船田裕昭1),堀川定儀1),森島恒雄1),佐野俊二2),石野幸三2),笠原真悟2),竹内 護3)

【目的】heterotaxyに合併する心奇形は,複雑な形態を有し機能的根治術としてFontan型手術を選択されることも多く,手術に際しては体静脈,肺静脈の還流異常が問題となる.heterotaxyの自験例をとおし,肝静脈還流異常に関して評価法および修復術式の選択について検討したので報告する.【対象】過去17年間に当施設で経験したheterotaxyのうちFontan手術を目標とした症例90例(right isomerism 77例,left isomerism 13例).Fontan術後55例,Glenn術後20例,Glenn術待機13例で,全例Glenn,Fontan術前に心エコー検査,心カテーテル検査・体静脈造影検査を施行.肝静脈還流異常が疑われた例では選択的肝静脈造影検査も行った.また症例によりhelical CT検査,MRI検査を併用した.【結果】肝静脈還流異常は24例(30%)にみられ,うち孤立性肝静脈は14例(16%;right isomerism 11例,left isomerism 3 例),IVC欠損は14例(16%;right isomerism 1 例,left isomerism 13例)で全例Fontan術前に異常を診断されていた.心エコー検査や個々の選択的肝静脈造影検査だけでは還流部間の距離・位置関係の把握が十分でなかった19例にhelical CT検査,6 例にMRI検査を施行し,全例還流部位の同定が可能で,Fontan術が不可能と考えられた症例はなかった.孤立性肝静脈14例のうち 6 例で心外導管を用いdouble barrelに近い形でTCPCを実施,4 例でlateral tunnelのseptationの工夫により修復を行っていた.術後平均観察期間32カ月で,肝静脈狭窄を来した症例はなく,残存する肝静脈還流異常のためdesaturationを来した症例もなかった.【考察と結論】Fontan型手術を目標とするheterotaxy症例では,術前に肝静脈還流部位を正確に同定し適切な術式を選択することが重要である.心エコー検査や選択的肝静脈造影検査では把握が困難な還流部間の距離・位置関係も,helical CTやMRI検査を併用することでより正確に診断が可能であった.

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