P-I-22
房室中隔欠損における左室乳頭筋の位置の客観的評価の試み
東京女子医科大学循環器小児科
坪井龍生,富松宏文,豊田智彦,石井徹子,篠原徳子,山村英司,森 善樹,中西敏雄

【背景】先天性心疾患の治療方針を決定するうえで左室の乳頭筋の位置は重要である.とりわけ房室中隔欠損(AVSD)においては乳頭筋の位置は僧帽弁形成術を施行するうえで重要な情報となる.しかし乳頭筋の位置を客観的に評価し表記する方法についての報告は少ない.【目的】AVSDにおいて左室乳頭筋の位置を客観的に評価,表示する方法を確立すること.【対象】左室乳頭筋では正常コントロールとして合併症のない川崎病患者10例.左室容量負荷群としてVSD 10例.右室容量負荷群として二次孔ASD 10例.AVSDでは完全型(cAVSD)10例,不完全型(iAVSD)10例.【方法】心エコー検査の左室短軸断面,乳頭筋レベルと僧帽弁レベルの収縮末期像で計測した.右室壁と左室壁が心室中隔と接する交点を結ぶ線の中点を回転中心と設定し,時計方向に前室間溝側を 0 度,後室間溝側を180度と規定した.前乳頭筋(APM)の位置する角度と後乳頭筋(PPM)の位置する角度とAPMとPPMの角度差(dA-P)を求めた.【結果】正常群では,APMの位置は64度 ± 7 でPPMの位置は123度 ± 7 であった.また 2 つの乳頭筋間の角度(dA-P)は59度 ± 6 であった.これに対してVSD群ではAPM 63度 ± 4,PPM 128度 ± 9,dA-P 65度 ± 9,ASD群ではAPM 70度 ± 8,PPM 136度 ± 9,dA-P 65度 ± 10であった.いずれもそれぞれ正常群との有意差を認めなかった.一方,cAVSD群ではAPM 75度 ± 9,PPM 123度 ± 11,dA-P度48 ± 6,cAVSD群ではAPM 75度 ± 12,PPM 124度 ± 11,dA-P度49 ± 6とAPM,dA-Pに有意差を認めた.【結語】APMの位置は正常より後方に位置し,前後乳頭間間隔は正常より小さい.乳頭筋の位置とその間隔を客観的に評価することは心内修復術や僧帽弁形成術を施行するうえで重要である.

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