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ファロー四徴症に関する臨床研究 第 2 報:右心系容量負荷に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタンの安全性と効果
福岡市立こども病院循環器科1),日本大学小児科2),福岡市立こども病院新生児循環器科3),心臓血管外科4)
石川友一1),石川司朗1),佐川浩一1),牛ノ濱大也1),中村 真1),住友直方2),総崎直樹3),角 秀秋4)

【背景】高血圧・心不全患者を対象とした大規模臨床試験で,ARBは心血管event発生を抑制し(LIFE),また,ACEIと同等の効果を有し,併用による相加効果が示唆された(RESOLVED).AT1受容体はangiotensin IIが存在せずとも,伸展という物理的刺激のみで活性化することが示され,これを抑制する(inverse agonist作用)ARBの存在が話題となっている.われわれが先に報告したとおり,TOF類縁疾患術後で右心系容量負荷が明らかな症例では伸展刺激と心血管内皮機能障害が示唆され,遠隔期の有害事象が報告されているにもかかわらず,治療法は確立していない.【目的】対象患者にinverse agonist作用を有するolmesartanを投与,有効性/安全性を検討.【対象】UCGにて中等度以上のPRを有するTOF類縁疾患術後患者43例(TOF 20例,PA/VSD 6 例,PA/IVS 6 例,DORV 4 例,TGA 4 例,その他 3 例),DCM 2 例の計45例.平均年齢12.2(1~28)歳,術後経過年9.5(1.2~25.6)年,全例NYHA I.【方法:open label uncontrolled study】患者/家族から同意を得た後,実薬を内服.内服前と 6 カ月以上経過後の凝固系(TAT,TM,APC)および線溶系(PIC,PAI-1)分子マーカー,高感度CRP,hANP,BNP,LVTEI index(UCG)を比較した.olmesartanは0.1mg/kg/day1xで開始,1 カ月後に自他覚症状,一般採血で副作用の有無を確認し,可能であれば0.2~0.3mg/kgまで増量/継続した.【結果】40例に継続投与〔平均観察期間 6(1~13)カ月〕できた.内服未開始 2 例,開始後未受診 1 例,副作用(3 歳男;活気低下/中止後回復,20歳女性;眠気だるさ/中止後回復)のため中止 2 例を経験した.1 例服用開始当初に頭痛を訴えたが,自然消失し継続中.一般血液検査所見は異常なし.現在,観察期間が不十分で臨床効果が判定できない.【結論】小児に対するolmesartanの忍容性と安全性は,成人と同等である可能性が示唆される.症例数増加,観察期間延長により,効果・安全性に関する情報を蓄積し,右心系容量負荷に対する治療法を確立する必要がある.

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