P-I-29
新生児の左室収縮様式の検討―2Dストレイン法を用いて―
横浜市立大学小児循環器科
瀧聞浄宏,岩本眞理,西澤 崇,鉾碕竜範,志水 直,中野裕介

【背景】2Dストレイン法は,心筋の局所壁運動やねじれ運動の解析に有用な検査法である.しかし,小児での報告は少なく,心筋の壁運動様式の詳細はよく知られていない.この方法を用いて,新生児における左室収縮様式を検討した.【方法】症例は,新生児14例(日齢 0~6 日,平均3.7 ± 2.2日)と健常小児10例(3~6 歳,平均5.2 ± 0.9歳).左室収縮能の指標として左室駆出分画をmodified Simpson法で算出した.左室のねじれ運動と 3 方向の心筋ストレイン(円周方向,短軸方向,長軸方向)を2Dストレイン法で解析した(EchoPac Dimension,GE MedicalSystems).左室のねじれ運動は,心基部と心尖部の短軸断面から時間-回転曲線を描かせ,その最大の差分を最大ねじれ角(PVT)とした.円周方向ストレイン(SC)と長軸方向のストレイン(SL)は,それぞれ乳頭筋レベルの短軸断面の 6 分画と四腔断面の 6 分画を平均して算出した.短軸方向ストレイン(SR)は,乳頭筋レベルの短軸断面の後壁を測定した.【結果】新生児と健常小児で左室駆出分画に差はなかった(62.9 ± 4.6% vs 65.5 ± 4.2%).新生児は健常小児と比較して,心尖部からみると,左室心尖部はより大きく反時計方向に回転し(10.4 ± 2.9deg vs 5.3 ± 2.4deg,p < 0.01),心基部の時計方向の回転は同程度であった(-2 ± 2deg vs -0.9 ± 3deg,ns).結果として,新生児の方が大きいねじれ運動を呈していた(11.7 ± 2.8deg vs 7.6 ± 3deg,p < 0.01).しかし,SLは,新生児が有意に低値であった(-19.0 ± 2.4% vs -23.4 ± 2.5%,p < 0.01).一方,SCとSRはともに 2 群間で有意な差はなかった(-18.5 ± 1.9% vs -20 ± 2.3%,77.1 ± 14.5% vs 76.5 ± 5.1%).【結語】新生児の左室壁運動は,ねじれが大きく,長軸方向の短縮は小さかった.しかし,左室駆出分画や壁厚増加は,健常小児と同程度に保たれていた.新生児の左室収縮において,ねじれ運動はより重要な役割を果たしている可能性がある.

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