P-I-31
心房中隔欠損におけるナトリウム利尿ペプチド(ANPとBNP)分泌の規定因子の検討
東京都立清瀬小児病院循環器科
武井 大,松岡 恵,河野一樹,大木寛生,葭葉茂樹,三浦 大,佐藤正昭

【目的】小児先天性心疾患においても,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が診療に有用であることが報告されているが,血行動態のどの因子が分泌に関与しているかは明らかでない.そこで,心房中隔欠損(以下ASD)におけるANPとBNP分泌の規定因子を検討した.【方法】対象はASDを有する55例の小児(0 歳 6 カ月~19歳 7 カ月,中央値 4 歳11カ月;男30例,女25例).他の心疾患合併例は除外した.心臓カテーテル検査時に採取した下大静脈血漿中のANP値,BNP値と以下の因子について,単回帰分析とステップワイズ法を用いた重回帰分析を行った:平均右房圧,右室拡張末期圧,平均肺動脈圧,肺体血流比,肺体血圧比,肺体血管抵抗比.【成績】(1)単回帰分析:ANP値は肺体血圧比のみと有意に相関し(r = 0.32,p = 0.02),平均右房圧(r = 0.26,p = 0.06),右室拡張末期圧(r = 0.01,p = 0.94),平均肺動脈圧(r = 0.26,p = 0.06),肺体血流比(r = 0.23,p = 0.09),肺体血管抵抗比(r = 0.13,p = 0.33)とは相関しなかった.BNP値も肺体血圧比のみと有意に相関し(r = 0.32,p = 0.02),平均右房圧(r = 0.25,p = 0.06),右室拡張末期圧(r = 0.09,p = 0.50),平均肺動脈圧(r = 0.22,p = 0.10),肺体血流比(r = 0.16,p = 0.23),肺体血管抵抗比(r = 0.18,p = 0.20)とは相関しなかった.(2)重回帰分析:いずれも,独立した規定因子は肺体血圧比(ANP値 p = 0.02,r2 = 0.10,BNP値 p = 0.02,r2 = 0.11)のみであった.【結論】今回の検討結果は,小児のASDではANPとBNPの分泌を規定する因子は肺体血流比でなく肺体血圧比であることを示す.小児のASDにおけるANP,BNPの分泌には,右心系の容量負荷よりも圧負荷の影響が大きいと考えられた.

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