P-I-32
先天性心疾患児においてBNP値はdiastolic wall stressに比例する
千葉県こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
犬塚 亮1),中島弘道1),山澤弘州1),菅本健司1),建部俊介1),上松耕太2),内藤祐次2),青木 満2),藤原 直2),青墳裕之1)

【目的】先天性心疾患(CHD)児の心不全におけるBNP値と血行動態の関係について検討する.【背景】近年心不全の診断および管理においてBNPが重要視されている.BNP値と血行動態の関係は完全には明らかでないが,in vitroでBNP産生調節が心筋の伸展刺激に起因することから,成人ではwall stressとの関係が注目されている.CHDでは,年齢,疾患,血行動態等の多様性のためBNP値の解釈および治療方針の決定が難しい.【対象・方法】2005~2006年に当院で心臓カテーテル検査を行ったCHD児について後方視的に調査し,ASD,TOF,PHなどの右室容量負荷や右室圧負荷のある 2 心室心の症例を除いた全75例について,血行動態パラメータと血漿BNP値の関係を検討した.対象はVSD,PDAなどの 2 心室心の症例が20例,機能的単心室の症例が55例.wall stressは心室の回転楕円体を仮定し,心臓カテーテル検査で計測した長軸径,短軸径,心室圧,心筋壁厚を用いて計算した.また,陽圧換気による血行動態の変化を考慮し,検査時挿管群(n = 31)と非挿管群(n = 44)に分けて検討した.【結果】検査時年齢は 3 カ月~18歳(中央値 2 歳 3 カ月).血漿BNP値は拡張末期圧(EDP)〔挿管群(r2 = 0.32,p < 0.001),非挿管群(r2 = 0.24,p < 0.001)〕,拡張末期容積正常%値(EDV%N)〔挿管群(r2 = 0.38,p < 0.001),非挿管群(r2 = 0.41,p < 0.0001)〕,拡張末期壁応力(EDWS)〔挿管群(r2 = 0.85,p < 0.0001),非挿管群(r2 = 0.73,p < 0.0001)〕と有意な相関を認めたが,特に強い相関を認めたのはEDWSであった.【結論】先天性心疾患児において,血漿BNP値と関連の深い臨床的血行動態的パラメータを検索した.EDPやEDV%Nと比較すると,心筋の機械的伸展刺激強度を反映するEDWSとより強い相関を認めた.CHDにおいてもBNPと心筋伸展刺激の関連が示唆された.

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