P-I-35
チクロピジンが著効したAmplatzer septal occluder留置後の片頭痛
北海道立小児総合保健センター循環器科1),埼玉医科大学小児心臓科2)
富田 英1),畠山欣也1),早田 航1),小林俊樹2)

【背景】Amplatzer septal occluder(ASO)留置後に10~40%で片頭痛を認めることがあり,文献的にはクロピドグレルが有効と報告されているが,本邦では保険適応の制約から使用できない.【目的】ASO留置後の強い片頭痛に対し,チクロピジンが著効した症例の経験から本症の治療について考察すること.【症例】15歳女児.4 カ月時に心房中隔欠損の診断を受けた.症状がなく,カテーテル治療の可能性がある形態であることから経過観察されていた.心臓カテーテルでの肺体血流量比は2.8で,肺高血圧はなく,経食道エコーでの最大径は18mmで,心房中隔には十分な辺縁がありASOの適応と判断された.埼玉医科大学にて22mmの閉鎖栓留置を受け完全閉鎖した.留置 2 日前よりアスピリン200mg/日を投与し,手技中はヘパリンを投与してACTを200秒以上に保った.術後は問題なく経過し 2 日後に退院.術後10日,特に誘因なく光過敏,閃輝暗点などの前兆の後,嘔気・嘔吐を伴う拍動性の頭痛を自覚し数時間持続した.頭痛軽快後は神経学的兆候を認めなかったが脳神経外科を受診.片頭痛と診断された.以後も毎日,同様の頭痛が出現するため術後14日,当科を受診.発作間欠期には症状所見なく,血液検査にも異常所見を認めなかった.心エコーでは遺残短絡,ASOへの血栓付着などは認めなかった.ASO留置に伴う片頭痛と診断し,チクロピジン200mg/日を追加処方した.チクロピジン内服開始日より片頭痛を認めず良好に経過している.【考察と結語】ASO留置後の片頭痛に対してはアミトリプチリンなどの片頭痛治療薬のほか,クロピドグレルが有効との報告がある.本症例ではクロピドグレルと同じ作用機序をもつチエノピリジン誘導体であるチクロピジンが著効した.チエノピリジン誘導体の有用性については多数例での検討が必要と考えられるが,有効な場合には副作用の点からはクロピドグレルの保険適応が望まれる.

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