P-I-36
高周波カテーテルアブレーションによる心筋マーカーの動態について
弘前大学小児科1),保健学科2)
高橋 徹1),佐藤 工1),江渡修司1),北川陽介1),大谷勝記1),佐藤 啓1),上田知実1),米坂 勧2)

【目的】小児期不整脈に対する高周波カテーテルアブレーション(RFCA)が普及してきたが,焼灼による心筋への影響に関する検討は少なく,血中心筋マーカーを用いて検討した.【対象】RFCAを行った44例(AVRT 30,AVNRT 5,AT 2,VT 7),7~27(13.6 ± 4.1)歳(R群).電気生理学的検査(EPS)を行ったがRFCA未施行の12例,7~26(12.6 ± 5.0)歳をコントロールとした(C群).【方法】R群はRFCA終了時および24時間後,C群はEPS終了時に採血し,トロポニンT(TnT),ミオグロビン(Mb),クレアチンキナーゼ(CK),CK-MB,ミオシン軽鎖I(MLC)の各血中濃度を測定した.【結果】R群で終了時と24時間後の血中濃度を比較すると,TnT(ng/ml):0.32 ± 0.33,0.13 ± 0.11(p < 0.0001),Mb(ng/ml):171 ± 168,79 ± 46(p < 0.0001),CK(U/l):222 ± 211,283 ± 374(ns),CK-MB(U/l):15 ± 8,12 ± 5(p = 0.005),MLC(ng/ml):2.6 ± 2.7,1.3 ± 0.9(p = 0.02)でCK以外は終了時に一過性に高値を示した.終了時のTnTはR群で0.32 ± 0.33,C群で0.03 ± 0.02(p < 0.0001).TnT濃度が異常値(> 0.1ng/ml)を示す割合はR群29/44(66%),C群0/12(p < 0.0001).他の指標では血中濃度,異常値を示す割合はR,C群間で有意差を認めず.R群で終了時TnT値の異常例(n = 29)と正常例(n = 15)を比較すると,通電回数は19 ± 14,9 ± 5(p = 0.01),総通電時間(秒)は348 ± 73,142 ± 45(p = 0.01)と異常例で有意に高値を示した.R群で各血中濃度と年齢は相関せず,不整脈の種類,焼灼部位による血中濃度の差はなかった.【結語】Mb,CK,MLCはC群でも異常値を示す症例があり(おのおの4/12,3/12,1/9),前投薬の筋注やシース挿入などによる心筋以外の組織傷害の関与が考えられた.C群でTnT濃度が異常値を示した症例はなく,R群で通電量が多く,心筋への侵襲が大きいと推測された症例でTnT濃度は高値を示した.TnTは心筋特異性,鋭敏度が高く,RFCAによる心筋傷害の指標として有用と考えられた.

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