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心房中隔欠損症カテーテル閉鎖術後の左心室リモデリング―成人例と小児例との比較―
岡山大学循環器疾患治療部1),小児科2),心臓血管外科3),麻酔科蘇生科4)
赤木禎治1),大月審一2),岡本吉生2),竹内 護4),戸田雄一郎4),岩崎達雄4),笠原慎悟3),石野幸三3),佐野俊二1, 3)

【背景】われわれは成人期心房中隔欠損症(ASD)においても小児期と同様にカテーテル治療によって左心室拡張末期径は経時的に拡大していくこと,さらにTei indexも経時的に改善していくことを報告した.しかしながらその改善速度には小児例と差が生じる可能性がある.【目的】若年例,成人例においてカテーテル閉鎖術前後の左右心室拡張末期径,Tei index,BNPの変化を前方視的に検討し,成人例における特徴を明らかにすること.【方法】2007年 1 月までにカテーテル治療を実施した52例中,3 カ月以上連続的にエコー評価が可能であった28例.治療時の年齢,Qp/Qs,使用デバイス径の中央値はそれぞれ32.4歳,2.6,20mmであった.これらの症例を若年群(12例:5~30歳),成人群(16例:31~84歳)の 2 群に分け,カテーテル治療前,治療24時間後,1 カ月後,3 カ月後の測定値を比較した.Tei index算出には呼吸による影響を避けるため 5 心拍以上の平均値をもって行った.心房細動合併例は除外した.【成績】治療前における左室Tei index(若年群0.39 ± 0.03,成人群0.42 ± 0.04),BNP値(33 ± 14,35 ± 22)は 2 群間に有意差を認めなかった.若年群の左室Tei indexは治療24時間後,1 カ月後,3 カ月後それぞれ0.32,0.31,0.31と治療後24時間で有意に改善し,以後も維持された(p < 0.05).同様の変化は成人群でも確認されたが(0.39,0.38,0.35),その変化は初期 1 カ月間において有意に緩やかだった.また成人例の治療後24時間,1 カ月におけるBNP上昇(87 ± 22,46 ± 16)は若年群(65 ± 11,29 ± 9)と比較し有意に高値であった(p < 0.05).【結論】成人例ではカテーテル治療後の急性前負荷増大に伴う左室拡張不全および心不全が危惧されてきたが,臨床上明らかな問題を生ずることはまれであった.成人例でも若年例と同様に左心室のリモデリングは認められるが,その速度は有意に遅く,より長期間の経過観察が重要であることが示唆された.

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