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チアノーゼ性心疾患におけるパルスオキシメータによる経皮的酸素飽和度と動脈血酸素飽和度の解離についての検討
埼玉医科大学小児心臓科1),小児心臓外科2)
赤塚淳弥1),竹田津未生1),岩本洋一1),石戸博隆1),松永 保1),先崎秀明1),小林俊樹1),岩崎美桂2),枡岡 歩2),朝野晴彦2),加藤木利行2)

【目的】近年,産科領域では呼吸器疾患や心疾患の早期発見を目的に出生児にルーチンでパルスオキシメータを装着し,経皮的酸素飽和度(SpO2)を測定する施設が多くなってきている.しかし,チアノーゼ性心疾患を有しながら,出生早期にSpO2低下がみられない,あるいは間歇的に低下するのみという理由で発見が遅れる例を時に経験する.チアノーゼ性心疾患にて入院中に動脈血液酸素分圧(SaO2)とSpO2の値に解離を認めた症例の臨床的背景を検討した.【方法】2005年 1 月 1 日~2006年12月31日に当院NICUに入院し,動脈ラインが挿入されたもののうち,SaO2が90以下の21症例(在胎36~41週,出生体重1,894~4,160g)を対象とした.SaO2とSpO2の差が 2 日以上にわたり10%以上であるものをSaO2とSpO2の解離があるものとし(A群),経過中に解離を生じなかったもの(B群)と臨床的背景を比較した.【結果】A群は 8 例,B群は13例,在胎週数,出生体重に差はなかった.A群では 8 例中 6 例が術前に血行動態不良のため動脈ラインを要したが,B群では全例手術前の血行動態は安定しており,動脈ライン確保は姑息術のために施行されたものであった.SaO2はA群では70~80%,B群では80~89%とA群で低い傾向がみられ,A群でのSaO2-SpO2解離時のSpO2は常にSaO2より高い測定値であった.SaO2-SpO2解離時に,A群 3 例が血行動態不良のためアドレナリンが投与されており(B群 0 例),3 例が腹膜透析を施行されていた(B群 0 例).死亡例はA群で 6 例みられたが,B群ではなかった.A群での解離期間については髄膜瘤術後の感染のため生直後より重症管理を要し死亡した例と重症PPHNで日齢 1 に死亡した例の 2 例では入院時より解離がみられたが,残りの 6 例は術後早期の血行動態が不安定な時期や死亡直前に解離がみられていた.【結語】SpO2とSaO2の解離は 1.チアノーゼの強い児が 2.血行動態不良な時期に生じやすいと考えられた.

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