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腹膜透析中の血糖コントロールは予後を改善する?
岡山大学麻酔科蘇生科1),心臓血管外科2),小児科3)
戸田雄一郎1),江木盛時1),森松博史1),岩崎達雄1),清水一好1),竹内 護1),森田 潔1),笠原真悟2),佐野俊二2),大月審一3),岡本吉生3)

【背景】intensive insulin therapy(IIT)は成人ICU患者の死亡率を低下させた.IITは重症心臓術後患者に最も有効であった(59%の死亡率低下).また小児ICU患者でも高血糖が予後悪化に関連するという小さな研究の報告もある.小児の心疾患患者でも成人同様,腎不全を合併したものは死亡率が高くなる.小児心疾患患者の腎不全では一般的に腹膜透析が施行される.日常臨床でこれらの患者が高血糖となることはまれではない.この患者群では血糖をコントロールすることで予後が改善されるかもしれない.【目的】重症心疾患の小児患者において,ICU平均血糖(Gav)がICU死亡と関係するか検討する.【対象患者】小児心疾患患者1,009名.【方法】腹膜透析(PD)を要した患者を重症患者と仮定し,GavとICU死亡の関連を解析.【結果】対象患者1,009名のうち40名がPDを要した.非PD患者の 9 名(0.9%)とPD患者の22名(55%)が死亡した.PD患者では,計9,725回血糖値が測定された.PD患者において,ICU生存者のGavは,非生存者と比較して全ICU期間中とPD施行中で有意に低かった(全ICU滞在中131 vs 152mg/dl;p = 0.004,PD施行中124 vs 152;p < 0.0001)が,PD非施行中では有意差はなかった(122 vs 120;p = 0.49).ROC曲線下面積は,PD施行中のGavが血糖指標のうちで最大であった.【結語】小児心疾患患者のうち,PD患者は非PD患者の61倍の死亡率を有する重症患者であった.PD患者でPD施行中の血糖値はICU死亡と最も強い相関があった.小児心臓周術期患者でのPD施行中の血糖制御は,そのICU死亡率を低下し得るかもしれない.

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