P-I-42
当院における新生児開心術の変遷―新しい体外循環法の導入に際して―
順天堂大学心臓血管外科1),小児科2)
川崎志保理1),岩村弘志1),山崎元成1),菊地慶太1),塩尻泰宏1),蒔苗 永1),梶本 完1),稀代雅彦2),新浪 博1),天野 篤1)

【目的】当院における新生児開心術の体外循環(CPB)法の変遷を提示してその効果につき検討を加えた.【対象と方法】新生児専用の体外循環を確立した2002年 7 月 1 日~2007年 1 月31日の新生児開心術31例を対象とした.対象を前期(2002年 7 月 1 日~2005年 4 月31日)の16例と後期(2005年 4 月 1 日~2007年 1 月31日)の15例に分けて変遷を後方視的に調べた.術者と麻酔法は同一であった.送血ポンプの径を(前:150mm→後:125mm),回路は(前:送血3/16,脱血1/4inc.ノンコーティング回路→後:送血,脱血3/16inc.→ミクロドメイン回路),プライミング組成は変化なくボリュームは(前:300ml→後:150ml),流量と低体温,心筋保護法に関しては変更しなかった.脱血法は(前:完全吸引脱血→後:吸引補助脱血),体外循環中の薬剤投与は(前:イソフルレンガス,ニトログリセリン,クロルプロマジン1mg/kg→後:クロルプロマジン3mg/kgのみ),限外濾過法として(前:ポリスルフォン膜のCPB中のDUFとCPB後のセルセーバ濃縮血返却→後:PAN膜のCPB中のDUF,CUFとCPB後のMUF),カニューラとカニューレーション法は(前:送血2.4mm,脱血12F,用手挿入→後:送血2.1mm,脱血10F,スタイレット挿入)と変遷した.前後期の間で術後経過につきそれぞれ比較検討を加えた.【結果】対象の日齢,体重,体外循環時間,大動脈遮断時間,転帰(前:死亡 1,後:死亡 0)に差はなかった.体外循環(後期はMUF)終了15分後の血圧,Hbにも有意差は認めなかった.しかし体外循環(後期はMUF)終了後15分間の輸血量(前:平均32ml,後:平均10ml,p < 0.05)と,エピネフリン使用率(前:38%,後:0%,p < 0.03)に有意差を認めた.気管内挿管期間(前:平均3.3日,後:平均1.3日,p < 0.05),腹膜透析使用率(前:38%,後:0%,p < 0.03),ICU滞在期間(前:平均5.5日,後:平均2.4日,p < 0.03)と後期の方が有意に少なかった.【結語】新生児開心術の成績向上には体外循環法の改良の関与が示唆された.

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