P-I-43
小児体外循環中におけるhyperoxemiaの弊害と生理的PaO2管理の意義についての臨床的検討
東京慈恵会医科大学心臓外科1),埼玉県立小児医療センター心臓血管外科2)
香川 洋1),森田紀代造1),宇野吉雅1),黄 義浩1),松村洋高2),木ノ内勝士1),橋本和弘1)

【目的】体外循環に起因するSIRSの病態生理に活性酸素障害の関与が指摘されており,特に虚血再灌流時におけるhyperoxemiaによる心肺機能障害が危惧される.しかし,体外循環中の動脈血酸素分圧(PaO2)は,非生理的高分圧(200~300mmHg)で管理されることが一般的で,小児体外循環中に積極的に生理的PaO2管理を行うことの意義については明らかでない.そこで,今回,体外循環中のPaO2管理において,hyperoxemiaとnormoxemiaの術後の呼吸循環動態について比較検討した.【対象および方法】乳幼児心室中隔欠損症(VSD)の心内修復術症例において,体外循環中の送血側PaO2を100~150mmHgに調整したnormoxemia(N群)の 9 例とPaO2を200~300mmHgに調整したhyperoxemia(H群)の13例に群別し,2 群間における術後の挿管時間,肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2),DOA,DOB投与量,CK-MB値,トロポニンT値について比較検討した.なお,両群間における年齢,身長,体重,手術・体外循環・大動脈遮断時間,術前肺動脈/大動脈圧比に有意差は認めず,VSDはsimple typeで他病変を認めないものとした.【結果】術後の挿管時間(h)はN群10 ± 13,H群27 ± 36と有意差は認めなかったが,N群では短時間となる傾向を認めた.術直後のA-aDO2(mmHg)はN群197 ± 132,H群227 ± 150,術直後のDOA,DOB投与量(μg/kg/min)はおのおのN群3.3 ± 1.6,1.3 ± 2.5,H群2.4 ± 1.5,1.6 ± 1.8で有意差は認めなかった.同様に,術直後および翌日のCK-MB値(IU/L)はそれぞれN群148 ± 58.6,54.8 ± 25.6,H群151 ± 69.5,57.5 ± 24.3,術直後のトロポニンT値(ng/mL)はN群7.14 ± 3.35,H群5.62 ± 3.02と有意差を認めなかった.【結論】小児開心術中の体外循環では,生理的なPaO2を維持するnormoxemic managementは術後の肺機能回復,挿管期間短縮に有用である可能性があり,IL-6,TNF1aなどのサイトカインについてもさらなる検討が必要である.

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