P-I-44
劇症型心筋炎の電気生理学的検査の検討
日本大学小児科
市川理恵,住友直方,谷口和夫,福原淳示,阿部 修,宮下理夫,金丸 浩,鮎沢 衛,唐澤賢祐,岡田知雄,原田研介

【目的】劇症型心筋炎(FM)は,重篤な不整脈を合併することが多く,重症心不全へと移行し心原性ショックに陥り,死に至ることもある.FMの心臓電気生理検査(EPS)所見を検討するために本研究を行った.【方法】FMと診断した 4 例(5~13歳,平均年齢 9 歳,男:女 = 1:3)の回復期(発症後平均36日)にEPSを行った.EPSは高位右房連続刺激,期外刺激,右室心尖部,右室流出路から連続刺激,3 発までの期外刺激を行い,洞結節機能,房室伝導能,心房性不整脈の誘発の有無,心室性不整脈の誘発の有無を検討した.これらの結果と臨床所見とを比較検討した.【結果】初発症状は発熱 4 例,嘔吐 2 例,頭痛 1 例,脱力感 1 例であり,入院までの経過中に意識消失は 3 例に認めた.不整脈は高度房室ブロック 3 例,心室頻拍 2 例,心室細動 1 例に認めた.意識消失を認めた症例は全例高度房室ブロックを呈していた.全例に心肺補助循環および一時ペーシングが必要であった.心肺補助循環は 2~4日(平均 3 日)で離脱した.薬物治療として,ステロイドパルス療法を 4 例に,大量γグロブリンを 3 例に使用した.EPSでは,洞結節回復時間780 ± 198.5ms(620~1,040ms),修正洞結節回復時間180 ± 135.2ms(30~350ms),Wenckebachレート147.5 ± 18.9ppm(120~160)で異常は認められなかった.また心房粗動,その他の心房性不整脈,心室頻拍,心室細動は誘発されなかった.【結語】FMは高度房室ブロック,心室頻拍,心室細動など致死的不整脈を合併することが多い.回復期のEPSでは,刺激伝導系に対する障害は認められず,頻拍性不整脈も誘発されなかった.このことは,急性期の不整脈が心筋細胞の浮腫が主体となって起こっており,回復期にはほぼ回復しているためと考えられる.しかし,心電図でST変化などを認める例もあり,長期予後も不明なことから,注意深い経過観察が必要と考えられた.

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