P-I-50
G-CSFによるアドリアマイシンのマウス心筋細胞障害抑制効果
京都大学発達小児科学1),京都府立医科大学発達循環病態学2)
平海良美1),足立壮一1),馬場志郎1),鶏内伸二1),岩朝 徹1),土井 拓1),金井恵理2),中畑龍俊1)

【背景】アドリアマイシン(ADR)は,有効な抗腫瘍薬として長年使用されているが,容量依存的に拡張型心筋症を発症し,その発症機序はいまだ確定されていない.一方,心筋梗塞を作成されたマウスにG-CSFを投与したところアポトーシスを抑制し,心筋保護作用を示したことが証明されている.【目的】ADRによる拡張型心筋症(DCM)マウスに対するG-CSFの心筋保護作用の検討.【方法】8 週のC57/BL6マウスを以下の 4 群に分類した.(1)AG群:ADR 5mg/kgを 2 週間で 6 回投与し,翌日よりG-CSF 100μg/kgを 5 日連続投与.(2)A群:ADR 5mg/kgを 2 週間で 6 回投与し,翌日より生食を 5 日連続投与.(3)G群:生食を 2 週間で 6 回投与し,翌日よりG-CSF 100μg/kgを 5 日連続投与.(4)C群:control群.ADR投与 5 週間後に,心エコー,心臓カテーテル検査(心カテ)で心機能を評価し,その後電子顕微鏡(EM)により組織を観察した.【結果】心エコー:左室拡張末期径はAG,A,G,C群でそれぞれ 3,3.41,3.05,3.07mmでA群はC,G群に対して拡張し(p < 0.01),AG群では改善していた(p < 0.01).左心室短縮率はAG,A,G,C群でそれぞれ43.5,39.0,47.7,47.8%でG,C群では差はなかったがA群で低下し(p < 0.05),AG群では改善していた(p < 0.05).心カテでは収縮能を評価するdP/dTはAG,A,G,C群はそれぞれ12,147,11,024,14,447,12,653mmHg/secでA群はC,G群に対して低下し,AG群では改善していた(p < 0.05).体重はAG,A,G,C群はそれぞれ26.2,26,28.7,30gでA群はC,G群に対して低下していた(p < 0.01).EMではG,C群では変化なかったがA群ではミトコンドリアが膨張し,大きさや配列の乱れがみられ,ミトコンドリアの障害が示唆された.AG群ではこれらの所見が改善していた.【結論】ADRによるDCMマウスの心筋障害は,ミトコンドリアが障害され,GCSFによって組織も心機能も改善がみられた.

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