P-I-51
マウス胎仔の肺毛細血管形成過程におけるVEGF-VEGFRシグナルの関与(第 4 報)―VEGF-VEGFRシグナリングの肺上皮発生への影響について―
京都府立医科大学発達循環病態学
山元康敏,白石 公,浜岡建城

【背景】正常および病的肺血管床の形成メカニズムを解明する目的でわれわれはこれまでにVEGF-Flk-1,Flt-1に着目し,両シグナルが血管内皮細胞の増殖をそれぞれ促進・抑制し肺毛細血管形成に寄与すること,両シグナルの相互的発現制御機構,動静脈分化への関与について報告してきた.今回,これらのシグナルが肺上皮発生に及ぼす影響について検討を加えたので報告する.【方法】胎仔肺の器官培養にアンチセンスDNAおよび特異抗体を作用させて,Flk-1,Flt-1おのおのの機能阻害を行った.蛍光免疫組織化学的に肺上皮マーカーであるprosurfactant protein-C(Pro SP-C)蛋白発現を評価した.【結果】Flk-1機能阻害によりPro SP-C発現はコントロールと比較して有意に発現低下が認められた(p = 0.0012).一方,Flt-1機能阻害では肺上皮細胞の分化異常は認められなかった.【考察】Flk-1陽性細胞が(肝臓発生でみられるように)成長因子・生存シグナル等を分泌し肺上皮発生を誘導している可能性が考えられた.【結論】正常マウス胎仔肺においてVEGF-Flk-1,Flt-1両シグナルの制御が正常肺毛細血管形成過程に重要であり,さらにVEGF-Flk-1シグナルを介する血管内皮細胞と肺上皮細胞のクロストークが正常な肺胞形成過程にとり必須であると考えられた.

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