P-I-55
岩手県における学童の血圧測定状況と今後の課題
岩手県立中央病院小児科
斎藤明宏

【背景,方法】小中学生の0.1~1%に,高校生の約 3%に高血圧を認める.小児の本態性高血圧は一般に軽症例が多く,降圧薬を要する例のほとんどが二次性高血圧である.高血圧が診断の契機となった 3 症例を提示し,現在の岩手県内の学童の血圧測定状況について調査,検討した.【岩手県学童血圧測定の実態と結果】2006年度,49市町村中,心臓検診時に血圧測定が実施されたのが11市町村,小児生活習慣病予防検診時が30市町村,その他が 1 市町村,未実施は 7 市町村であった.結果,小学生5,642名中,高血圧傾向が 5 名(0.09%),高血圧は 0 名であった.中学生11,500名中29名(0.3%)が高血圧傾向,高血圧は 1 名(0.01%)であった.高校生15,762名中135名(0.9%)が高血圧傾向,5 名(0.03%)が高血圧であった.【当院にて高血圧を契機に基礎疾患が判明した例】症例 1:13歳女児,中学入学時検診で高血圧を指摘され,大動脈炎症候群と診断,初診時血圧は165/101mmHgであった.症例 2:16歳男児,高校入学時検診にて心電図異常を指摘.問診にて高血圧の既往あり,大動脈縮窄症と診断,初診時血圧は166/87mmHgであった.症例 3:2 歳女児,心不全にて当院紹介.高度左心機能不全と高血圧を呈し特発性乳児動脈石灰化症と診断,初診時血圧は177/76mmHgであった.【考察】学童の高度高血圧例の多くが二次性の高血圧である.しかし,小児では病院でさえ血圧測定される機会が少なく,高血圧は診断されにくい状況にある.また,検診結果が家族に通知はされるものの,受診状況などの追跡調査はされていなかった.血圧測定は痛みや苦痛を伴わず,学校教育上成人病予防における危険因子に関心をもたせるきっかけにもなり,小児期より血圧測定によって健康に対する意識向上に役立てられるようなシステム作りが必要と考える.

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