P-I-58
Björk法の遠隔期病態とTCPC conversion
榊原記念病院外科
安藤 誠,高橋幸宏,和田直樹,佐々木孝,川瀬康裕

【目的】本院では,TAIcおよびIb(弁下狭窄例)に対して1978~1985年にBjörk法(右房-右室バイパス)を第一選択とした.術後20年以上が経過し,可能な全症例にTCPC conversionを行った.本法特有の血行動態変化に伴う症状発現と治療法を評価した.【方法】1978年10月~1985年 9 月に施行したBjörk変法 8 例が対象.男児 6 例,女児 2 例.手術時年齢は5.4~15.8(中央値6.1)歳.TA Ib 6 例,Ic 2 例.右房-右室バイパス(ダクロン人工血管 6 例,後面心房壁 + 前面異種心膜パッチ 2 例)+ 心房/心室中隔欠損閉鎖を基本とし,肺動脈漏斗部狭窄解除を 6 例,拡大肺動脈形成を 1 例に追加した.【成績】1 例がBjörk術後 2 日目に死亡.ほかの 1 例が他施設にてフォロー.当院で追跡可能な 6 例全例にバイパス狭窄が発生,0.4~25.2年で手術介入を要した.1 例はバイパス狭窄解除術後に高度脳障害発症し,以降の手術介入を断念.2 例で,右房-肺動脈吻合を追加したが,収縮期の肺動脈-心房逆流により循環不全を呈し,1 例は遠隔死(術後26.8年),1 例はTCPC conversionを要した.その他の症例の中隔期成績は良好であった.右室拡張末期容積は術前25.0 ± 8.7から80.4 ± 31.1% of N(術後1.1 ± 1.1年)に拡大した.全例AF/Afが術後16.8~20.6(17.5)年で発症,心房内血栓は認めなかった.前述例を含めてTCPC conversion(22mmゴアテックス人工血管)を術後19.7~26.1(24.0)年で 4 例に施行.術前右房圧14~19(17.5)mmHg.右室縫縮,アブレーションは施行せず.術後経過は良好であり,AF/Afは消失,または残存しても一過性.2 例で洞性徐脈を合併した.【結論】Björk法施行後は速やかに拡大した右室の拍出流を伴う良好な血行動態を有した.その後バイパス狭窄の進行に伴い,術後20年弱でAF/Afを発症した.本症例群のTCPC conversion後の経過は不整脈の制御も含めて良好であった.今後は右室の形態機能変化,不整脈再発,洞性徐脈などの経過観察が課題となる.

閉じる