P-I-59
20年以上を経過したFontan型手術術後の問題点
兵庫県立尼崎病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
森島 学1),藤原慶一1),大谷成裕1),大野暢久1),清水和輝1),藤原靖恵1),今井健太1),坂崎尚徳2),若原良平2),李 進剛2)

【はじめに】当院ではFontan手術を1984年から行っている.TCPC導入以前にFontan型手術を行った患者は現在成人期を迎え,遠隔期の問題点が報告されている.【対象】Fontan手術後20年を経過した 6 例(男:女 = 3:3)を対象とした.疾患は,TA:2 例,SV:4 例(LV:RV = 1:3).術式は,右房肺動脈吻合(APC法)4 例,右房右室吻合(Björk法)2 例であった.先行姑息手術はBT 3 例,original Glenn 3 例であった.Fontan手術時年齢は6.9~16.9歳(平均11.9歳)であった.経過観察期間は20.6~21.6年(平均21.2年),現在の年齢は28.5~38.5歳(平均33.7歳)であった.【結果】遠隔死亡は 1 例であった.NYHAは 1 度:3例,2 度:1 例,4 度:2 例であった.full time work 4 例,主婦 2 例で妊娠,出産例はなかった.全例,成人後にカテーテル検査を行っており,CVP 13.8 ± 4.1mmHg,CI 2.6 ± 1.0l/min/m2であった.hANP 50.6 ± 22.6pg/ml,BNP 117.8 ± 67.8pg/mlと高値であった.上室性不整脈を全例(pAf:1 例,PSVT:1 例,Af:2 例,AF:2 例)に認め,Af,AFの4例にTCPC conversion ± rtMAZEを行った(Fontan術後平均19.5年,15~21年).2 例は心不全(CVP16,21)の悪化のために入院となりconversionを行った症例で,弁逆流が高度で弁置換も同時に行った 1 例が術後LOSのため死亡した.もう 1 例は,conversionのriskが高いため経過観察されていた患者であったが,胸腹水の急激な増加のため入院となり手術となった患者で,術後CVPの低下と胸水の減少を認めた.生存 3 例中,1 例が術後 1 年目にSSSのためペースメーカ植込みとなり,2 例は術後NSRを維持している.【結語】Fontan術後20年のQOLは比較的保たれているが,全例に上室性不整脈を認めた.心不全発症後のTCPC conversionはriskが高く,早期のTCPC conversionと不整脈治療が必要と思われた.

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