P-I-63
無脾症候群に対する治療戦略と成績の検討
近畿大学奈良病院心臓血管外科1),小児科2)
長門久雄1),西脇 登1),金田幸三1),横山晋也1),平尾慎吾1),平間大介1),森嶌淳友1),吉林宗夫2),三崎泰志2),北村則子2),石原温子2)

【対象】2001年 8 月より当院で手術介入を行った無脾症候群は10例でこれらに計26回の手術を行った.基本的な治療方針は(1)初回手術での適正かつ均等な肺血流の確立(central palliation),(2)BDG,(3)TCPCである.【結果】初回手術(n = 8,ほかの 2 例は初回手術がBDGまたは他院で手術):日齢中央値38日,体重3.3kg,術式はAP shunt 5,RV-PA shunt 2,PA plasty(CoPA)4,TAPVC repair 1,CAVV repair 1,PAB1.術後に循環虚脱 1 例(緊急clipping),shunt revision 1 例(clipping後の血栓,ECMO),BTからcentral shuntへの変更 1 例(ECMO).全例が耐術し退院.第 2 回手術(n = 10):平均7.1カ月,体重6.3kg,術式はBDG(hemi Fontan)およびPA plasty 8,APS追加 3,SVC & PV obstruction解除 1,CAVV repair 2,PA septation 1.1 例はPHで経過観察中にSVC & PV obstruction(mixed type 3/4 領域の閉塞)が顕在化しこれの解除術および弁形成とshunt追加を行った(8m).1 例はグレン待機中に低酸素進行し心停止となりshunt追加を行った.救命したものの低酸素脳症となった.のちに右上葉のPVOが顕在化したが手術適応なしと考えた.手術死亡は 1 例〔生下時よりCAVVRが強かったが初回手術では形成せず経過観察したが次第に心機能低下.BDGおよびCAVV repair(7m)するもLOS〕.第 3 回手術(n = 6):平均18.6カ月,体重9.0kg TCPC 5,BDG + CAVV repair + TAPVC repair(mixed type)1,1 例は外科手術後右膿胸から多量の側副血行路が発生したがコイル塞栓が著効.全例耐術TCPC待機中 3 例.【考察】注意すべきは経過中に肺静脈狭窄が発生してくる症例があることである.房室弁逆流はどの時期に手術介入するかが大切であるが,必要な症例には時期を逸さずに手術介入するべきと思われた.【まとめ】無脾症候群は多様な経過をとる.特に基本路線を逸脱した場合には個々の綿密な経過観察および治療戦略が必要である.

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