P-I-64
一心室修復が成立したisomerismの長期遠隔成績
大阪大学心臓血管外科1),小児科2)
帆足孝也1),市川 肇1),上野高義1),前畠慶人1),上仲永純1),井手春樹1),小垣滋豊2),吉田葉子2),那須野明香2),前川 周2),澤 芳樹1)

一心室修復が成立したisomerismの遠隔期臨床像を検討する.【対象】当施設で一心室修復(UVR)を目指して手術介入を行ったisomerism58例のうち25例(43%)がUVRに到達した.このうち 5 年以上生存したのは11例(右 6,左 5)であり,これを長期生存群として検討を行った.術後平均観察期間は14 ± 5 年(mean ± SD)であった.【方法】対象群の遠隔期臨床経過と長期生存の危険因子を後方視的に検討した.【結果】主心室は右室型10,左室型 1 例であり,9 例が共通房室弁(CAVV)(うち 3 例で中等度以上の逆流)を,2 例が肺静脈狭窄(PVO)を伴わない総肺静脈還流異常(TAPVC)を合併していた.最終到達手術は9.3 ± 6.2歳時に施行され,内訳はfenestration追加 3 例を含むフォンタン型手術 8〔心房内ルーティング 1,心耳肺動脈吻合 2,心外導管(EC-TCPC)5(conversion 1を含む)〕および下大静脈欠損例に対する上大静脈肺動脈吻合 3 例で,同時手術はCAVV形成術,置換術が各 1 例であった.全例で計19回の準備手術が施行された.生存は 7 例でfenestrationを閉鎖できない 1 例がcyanosisと心房性不整脈に難渋しているが,残る 6 例は合併症なくNYHA I°で術後平均11.5 ± 6.7年,最長20年の長期生存が得られている.生存 7 例の平均SpO2,肺動脈圧,肺動脈楔入圧,心室収縮末期容積指数および駆出率はそれぞれ88.8 ± 6.8%,11.0 ± 2.6mmHg,5.8 ± 2.0mmHg,104 ± 37ml/m2および52.0 ± 6.5%といずれも良好であった.経過中の死亡は 4 例で,Kaplan-Meierによる累積生存率は10,15,20年でそれぞれ100,71.4,53.6%であった.死因は 3 例で単心室不全,2 例でcyanosisであった(重複を含む).単変量解析による長期生存の予測因子は段階的手術(p = 0.019),最終到達手術がEC-TCPC(p = 0.019)および房室弁逆流を認めないこと(p = 0.040)であった.【まとめ】一心室修復が成立した症例においてもisomerismの長期予後は不良であるが,現存する症例群の経過は良好であり,今後の改善が期待される.

閉じる