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無脾多脾症候群における見過ごされてきたリスクファクター―周産期の生命予後を左右する合併症―
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科
青木寿明,稲村 昇,石田秀和,河津由紀子,北 知子,萱谷 太

【はじめに】無脾・多脾症候群は予後不良な疾患で,合併する心疾患がその生命予後を左右する.しかし,胎児診断された例の周産期での生命予後に関する報告は少ない.【目的】当センターで胎児診断した無脾・多脾症候群の周産期の経過を後方視的に検討し,周産期の生命予後について検討する.【対象と方法】対象は1983年から2007年までに当センターで胎児診断した無脾・多脾症候群51例.観察期間は 0~17年である.無脾症(n = 28)と多脾症(n = 23)に分け,(1)診断週数,(2)胎児期の異常,(3)生命予後,(4)周産期死亡の誘因について検討した.【結果】(1)初診の在胎週数は無脾症が19~38週,平均29.5週,多脾症が14~40週,平均26.5週で多脾症が早い傾向(p = 0.06)にあった.22週未満で診断した症例は10例で無脾症が 1 例,多脾症が 9 例であった.多脾症の 9 例中 5 例は徐脈で紹介されていた.(2)胎児期の異常は無脾症で羊水過多(n = 3),胎児水腫(n = 1),中枢神経系の異常(n = 2),多脾症で徐脈(n = 16),胎児水腫(n = 4),中枢神経系の異常(n = 1)であった.出生後の異常は無脾症で喉頭気管閉鎖(n = 2),消化管閉鎖(n = 3),食道裂孔・横隔膜ヘルニア(n = 4)であった.多脾症は腸回転異常(n = 1)であった.(3)予後は無脾症で中絶(n = 1),胎児死亡(n = 1),新生児死亡(n = 6)であった.多脾症で中絶(n = 6),胎児死亡(n = 2),新生児死亡(n = 0)であった.(4)周産期死亡した無脾症は 7 例で,誘因は喉頭気管閉鎖と横隔膜ヘルニアであった.多脾症の 2 例は高度徐脈による心不全が誘因であった.【まとめ】胎児期に診断される無脾・多脾症候群の周産期生命予後は出生前が多脾症の方が不良で,高度徐脈による妊娠早期の診断と心不全が原因であった.一方,出生後の新生児死亡は無脾症で多く,合併する気道系,消化器系の異常が原因であった.

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