P-I-66
当院におけるright isomerism(RI)のPVOおよび房室弁逆流(AVVR)に対する手術成績の検討
兵庫県立こども病院心臓血管外科1),明石医療センター心臓血管外科2)
日隈智憲1),大嶋義博1),吉田昌弘1),島津親志1),松久弘典1),井上 武1),山口眞弘2)

【背景】乳児早期までに手術介入が必要なPVOやAVVRを合併したRIに対し,当院ではoff pumpでのPVO解除を行ってきたが満足のいく成績は得られず,2004年以降は新生児でも積極的にon pumpでの介入に方針転換した.【目的】PVOとAVVRに対する手術成績を検討する.【対象】1987年10月~2006年12月までに当院に入院したRI 36例.【結果】TAPVRは22例(上心臓型 8,下心臓型 5,心臓型 7,混合型 2)であり,うち14例(上心臓型 7,下心臓型 4,心臓型 2,混合型 1)がPVOを呈した.off pumpで 6 例に解除術を施行しており,直接死 1 例,再狭窄 4 例.再狭窄例は 1 例をTAPVR repairのみ,3 例を房室弁形成と同時にon pumpで再手術している.3 例がFontanに到達しているが,生存例は再狭窄のなかった 1 例のみである.乳児早期までにon pumpでTAPVR repairを施行した 8 例は直接死 5 例,遠隔死 1 例(AVVR),再狭窄 1 例.再狭窄例はBDG時にPVOを解除し,現在待機中.1 例がFontanに到達したがTCPC後にDICで死亡.手術介入を要するAVVRは16例にみられた.房室弁形成の時期はBDG前:3 例,BDG時:5 例,TCPC時:8 例.このうちAVVR増悪のため弁置換術を必要としたものはBDG後の 2 例,TCPC後の 1 例.TCPC以前に弁形成を行った 8 例中Fontanに到達したのは 1 例のみで,現在 3 例が待機中である.Fontan到達の 9 例中 6 例が耐術した.Fontan到達例と非到達例(待機例除く)のAVVRの程度に有意な差はなく(p < 0.53),今回の検討ではFontan到達のrisk factorではなかった.しかし,弁形成を行った症例は術直後の逆流は良好に制御されていても,ほとんどの症例で 3 カ月~1 年で元の程度にまで逆流が増悪しており予後不良であった.【結語】RIに対する成績は不良であるが,最近TAPVR repairにsutureless法を用いて1.6kgの新生児が耐術している.また,バイアグラ,トラクリアといった薬剤の導入により待機症例の状態は良好でFontan到達率と遠隔期成績の向上が見込まれる.

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