P-I-69
乳幼児重症Ebstein奇形に対するRV exclusionおよび両方向性Glenn手術
京都府立医科大学小児心臓血管外科1),小児内科2)
山南将志1),山岸正明1),宮崎隆子1),久岡崇宏1),前田吉宣1),木谷公紀1),山本経尚1),佐々木裕二1),浜岡建城2)

【はじめに】高度のTRとRA,RVの拡張により,LVへの圧排を伴った乳幼児重症Ebstein奇形に対し,RV exclusion,両方向性Glenn手術(BDG)を施行した 3 例を経験したので報告する.【対象】症例 1:9 カ月女児.Ebstein奇形,肺動脈閉鎖,PDA,肺動脈低形成(PA index 83),WPW症候群.1 カ月時,肺動脈形成術 + 右BT shunt術施行.術後PSVT頻発.CTR 68%,SaO2 73%,LVEDV 138%N,PA平均圧17mmHg.症例 2:1 歳女児. Ebstein奇形,ASD.CTR = 66%,PA index 131,SaO2 70%,LVEDV 45%N,PA平均圧13mmHg.症例 3:1 歳,女児.Ebstein奇形,ASD.CTR = 79%,PA index172,SaO2 87%,LVEDV 54%N,PA平均圧12mmHg.超音波検査で全例,高度のTRを認め,RVは著明に菲薄化し,RA,RVの拡張とLV圧排著明.症例 1,2 では三尖弁組織は痕跡的.【手術】全例菲薄化したRV前壁を広範囲に切除し縫合閉鎖(RV exclusion).三尖弁口は穴あきePTFE patchで閉鎖.ASDを拡大.術中cryoablation,BDGを施行.症例 1 では肺動脈形成術を併施.【結果】手術死亡,遠隔死亡なし.全例で術後不整脈認めず.それぞれ術後 1,1,6 日目に人工呼吸器より離脱,術後経過良好であった.術後SaO2はそれぞれ86,85,92%.LVEDVは術前後でそれぞれ138%N→226%N,45%N→62%N,54%N→66%Nと改善.LVEFは72%→77%,69%→73%,85%→81%.術後カテーテルを施行した症例 1 ではPA圧18mmHgで術後12カ月目にFontan手術到達.症例 2,3 はFontan手術待機中(術後11,6 カ月経過).【考案】乳幼児重症Ebstein奇形では三尖弁修復によるbiventricular repairは困難であり,RV exclusion未施行ではLV圧排残存により低拍出状態となる.肺血管条件がGlenn循環を満たす症例では,BDGを併施することによりLV前負荷も軽減できる利点がある.また術後不整脈予防のため術中ablationを併施することは必須である.【結語】RVが高度に拡大,非薄化し,痕跡的三尖弁組織しかもたない乳幼児重症Ebstein奇形に対する術中ablationを伴うRV exclusion,BDGは有用な治療戦略である.

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