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Damus-Kaye-Stansel吻合術後の弁逆流についての検討
兵庫県立こども病院心臓血管外科1),循環器科2),明石医療センター心臓血管外科3)
島津親志1),大嶋義博1),吉田昌弘1),松久弘典1),日隈智憲1),井上 武1),鄭 輝男2),城戸佐知子2),田中敏克2),藤田秀樹2),山口眞弘3)

【目的】左室流出路狭窄を伴う疾患に対して,Damus-Kaye-Stansel吻合(DKS)が有用な手術法として報告されている.しかし,遠隔期の旧肺動脈弁の逆流が危惧されるところである.今回,われわれはDamus-Kaye-Stansel手術後の弁機能について検討した.【対象】1987年 1 月から2006年10月までに当院で行われたDKS症例のうち,耐術した17例を対象とした.疾患の内訳はTGA 1,IAA 3,DIRV 3,僧帽弁異常 6,DORV 4 例であった.DKSの内容はブタ心膜パッチで連結 1,大動脈壁フラップ(人工血管補填)7,double barrel 8(うち補填物を使用しなかった例 3),大動脈弓に肺動脈・下行大動脈を吻合 1 例であった.同時に行った手術はRVOT再建 1,TCPC 5,BDG 7,BT 2,RV-PA shunt 2 例であった.【結果】経過観察期間は 2~127カ月,平均49カ月であった.遠隔死亡はDKS + RV-PA shunt後のIAA症例 1 例のみで,カテーテル検査翌日に突然死した.術後に,旧肺動脈弁の逆流を来した症例は 6 例(35%)で,trace 1,mild 3,mild-moderate 2 例(11%)であった.うち,大動脈壁フラップが 4,double barrel法が 2 例であった.また,いずれも先行手術にPABが行われていた(17例中,先行手術にPABが行われた症例は14,両側PAB 2 例).弁逆流・左室流出路狭窄に対する再手術はなかった.【まとめ】DKS吻合は遠隔期の問題となる弁逆流を来すことは比較的少なく,左室流出路狭窄解除術として優れた術式であると考えられた.また,double barrel法は弁逆流の原因となる弁の変形を回避できる有用な方法であると考えられた.

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