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付加的肺血流をなくした両方向性Glenn手術における上大静脈血流量の重要性
大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科1),小児循環器科2)
川田博昭1),岸本英文1),盤井成光1),石丸和彦1),齋藤哲也1),萱谷 太2),稲村 昇2),北 知子2),河津由紀子2),青木寿明2),石田秀和2)

【目的】付加的肺血流をなくした両方向性Glenn術〔APF(-)BG術〕では,肺血流量低下による低酸素血症が懸念されることがある.われわれはDKS吻合施行のBG術 8 例で,高い手術時年齢がその危険因子であると報告した.一方,体表面積(BSA)が0.5m2以上の症例では上大静脈還流血流量(SVF)と総体静脈還流血流量(TVF)の比(SVF/TVF)がBSAの増加と逆に減少する報告があるが,乳幼児期の血流動態は明らかでない.APF(-)BG術例の術後低酸素血症の危険因子を検討した.【対象】APF(-)BG術施行32例.15例は肺動脈閉鎖,同時に12例はDKS,5 例はNorwood術施行例.手術施行年齢は,1 例(9 歳10カ月)を除き98日~4 歳11カ月(中央値 1 歳 8 カ月).【方法】(1)APF(-)BG術例を,退院後も酸素療法を要した 7 例とBG後入院中にFontan術を行った 2 例の計 9 例の低酸素血症群(L群)と残る23例(N群)に分けて,低酸素血症の危険因子を検討.(2)2006年の開心術例中,体外循環中にSVFとTVFを電磁流量計で測定した92例を対象にSVF/TVFとBSAの関係を検討.【結果】(1)L群とN群のSpO2の平均値は,CPB離脱後には68,86%,ICU入室時には75,85%,中枢ルート抜去時(抜管,酸素投与下)には77,85%で,L群で低値.BG術前の平均肺動脈圧,PA index,体心室容積指数,駆出率,拡張末期圧に差なし.手術時年齢は,最高齢例(9 歳10カ月,L群)以外ではL群(平均 1 歳)がN群(2 歳 5 カ月)より有意に低年齢でL群 9 例中 6 例は180日未満.L群は,肺動脈閉鎖例15例中 1 例,DKS 12例中 3 例,Norwood 5 例全例(p < 0.001).SVF/TVF(%)は,L群平均39,N群47,SVF/BSA(ml/min/m2)は,L群830,N群1,235で,有意にL群でのSVFが低値.(2)SVF/TVFは,BSA 0.46~0.5m2での56.7%が最高値で,BSAが上昇しても低下しても低下した.手術時日齢180以下では以上に比してSVF/TVF,SVF/BSAともに低値.【まとめ】付加的肺血流をなくしたBG術では,9 歳10カ月の高年齢と,6 カ月以下の低年齢では術後低酸素血症となりやすいが,上大静脈血流量(分布比および絶対量)が生理的に少ないことが関与していると考えられた.

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