P-I-72
小児期僧帽弁閉鎖不全(MR)の経過に関する検討
兵庫県立こども病院循環器科
齋木宏文,鄭 輝男,城戸佐知子,田中敏克,藤田秀樹,井出健太郎,富永健太

【目的】小児期MRを成因から検討し治療の方向性を明らかにすること.【対象と方法】1989~2005年に心疾患を疑われ当科初診し有意なMR(mild以上)を認めた症例でfollow up 1 年以降も逆流が存続,または外科治療を要した41例(他の心疾患,代謝異常,先天奇形症候群の合併を除く).原因を分類し,背景,経過,弁輪など各種計測値について検討.【結果】内訳は弁下組織(乳頭筋,腱索)のみ異常13例,弁尖(cleft,低形成,萎縮)/弁下とも異常 7 例,弁尖のみ異常 4 例,弁下/弁尖に明らかな異常のない逸脱17例.成因は先天性18例,特発性逸脱17例,後天性 6 例(IE 3 例,MCLS 1 例,特発性腱索断裂 1 例,虚血 1 例).逸脱症例では形成を要した 1 例(術後MR極少量)を除き増悪なし.弁下のみ異常13例中10例(置換 4 例),弁下/弁尖とも異常 7 例中 6 例(置換 1 例)に外科治療施行.背景因子と予後(平均観察期間 7 年.置換 5 例のうち術後心不全継続 1 例,形成11例のうちMR残存中等度以上 5 例,中等度まで 4 例,軽度 2 例)に一定の傾向なし.このうち14例が初診より 1 年以内に外科手術施行.弁尖のみ異常 4 例は弁形成し,3 例は修復良好(1 例はIEで広範弁尖切除し中等度MR残存).手術/非手術例(観察期間108 ± 69カ月/81 ± 47カ月,n.s. 初診年齢平均35カ月/49カ月,n.s.)の比較では手術例で有意に初診時MRが高度(p < 0.001)でCTR(0.59 ± 0.08/0.51 ± 0.04:p < 0.001)が大きかった.【考察】弁下組織に異常のない症例は外科治療を要する症例でも比較的良好な修復が期待され,短期的予後は良好.一方,先天性MRの多くを占める弁下組織の異常は初診時にすでに中等度以上の逆流を認め,増悪の早い病態が示唆される.術後経過は背景因子と明瞭な相関がなく,障害機能の重症度に影響されると考えられる.【結論】長期にわたる治療方針を検討するなかで初期からの超音波検査による詳細な逆流機転の把握は重要であり,経過観察における定量化が課題である.

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