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房室中隔欠損修復におけるAlfieri法の応用
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児心臓血管外科1),自治医科大学大宮医療センター心臓血管外科2),自治医科大学心臓血管外科3)
河田政明1),山口敦司2),立石篤史1),森田英幹3),三澤吉雄3)

房室中隔欠損(AVSD)修復の要点は左側房室弁の形成にある.弁組織の少ない非Down症候群例や左側外側尖の可動性不良例などでは形成に苦慮する場合がある.Alfieri法に準じた二弁口化手技はこうした例で有用な外科的手法となる場合がある.【症例提示】症例 1:35歳女性,Down症候群に合併した完全型(~中間型)AVSDで左右房室弁の高度逆流を合併,共通前尖に石灰化を認め,左側外側尖は辺縁が肥厚硬化を示した.裂隙縫合閉鎖では逆流が著明に残存,4-0 PPP糸により左側外側尖中央部先端と裂隙縫合部先端を縫合し,逆流は軽度となった.弁輪補強は行わなかった.症例 2:6 カ月女児,高度房室弁逆流を伴う完全型AVSD(C型),非Down症候群例で弁組織が菲薄脆弱で尖先端,左側外側部の挙上が特に不良,裂隙縫合閉鎖後も弁口中央部から高度の逆流あり,同様に二弁口化で逆流は良好に制御され軽微となった.弁輪補強は行わなかった.いずれの例も術後狭窄所見はみられていない.【考察】房室中隔欠損年長例では弁尖の可動性や接合が不良であったり,非Down症候群例では弁組織がDown症候群例に比べ,少なく,菲薄脆弱で修復に困難を来す場合がある.またAVSDではまれならず先天的な重複弁口を有する例もみられる.このためAVSD修復時に左側房室弁逆流(特に弁口中央部からの逆流残存)の制御困難な例では積極的にAlfieri法に準じた二弁口化によって逆流制御が可能となる例がある.裂隙は逆流再発予防の観点から縫合閉鎖が望ましい.長期的効果の面で必要とされる人工弁輪による弁輪補強については成人例では可能であるが,小児例では亜全周性弁輪縫縮が考慮の対象となる.長期的効果(逆流再発の有無や狭窄所見の有無)については慎重な経過観察が不可欠であるが,高度の逆流残存例で人工弁置換の選択を回避するために本法は有用な手技となる可能性がある.

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