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先天性僧帽弁狭窄症の 4 例
大垣市民病院胸部外科1),小児循環器科2)
石本直良1),玉木修治1),横山幸房1),石川 寛1),恒川智宏1),田内宣生2),倉石建治2),西原栄起2)

【はじめに】先天性僧帽弁狭窄症(CMS)は心奇形の一分症であることが多く,合併する心奇形によっては予後が不良である.今回,手術を施行した 4 例のCMS症例を検討した.【症例】症例 1:2 歳 7 カ月,体重5.9kgで人工呼吸下の女児.supra-valvular mitral ringで左室流入血流の最高速度(Vmax)は3.46m/s,合併奇形はCoA,PDAであった.症例 2:3 歳 2 カ月,体重7.5kgで人工呼吸下の男児.parachute mitral valveでVmaxは2.28m/s,合併奇形はCoA,PDAとLVOTOであった.症例 3:7 カ月,5.5kgの男児.parachute mitral valveでVmaxは2.33m/s,合併奇形はmuscular VSD,Ebstein's anomaly,cor triatriatumであった.症例 4:1 歳 6 カ月,体重6.6kgの女児.supra-valvular mitral ringでVmaxは3.01m/s.合併奇形はCoA,LVOTOで 1 カ月時CoAに対してEAAAを施行された.【UCG所見】supra-valvular mitral ringは肥厚した弁上組織の左室側に正常と思われる弁組織を確認することで,またparachute mitral valveは 1 本のpapillary muscleと袋状のmitral valveに 1~数本の流入波を確認することで確定診断された.【手術成績】症例 1,4 ではring resectionにより脆弱ではあるがpliableな弁尖とほぼ正常な弁下組織を確認した.症例 2,3 では弁尖の癒合および腱索欠損による乳頭筋の弁尖への癒合を認め,commissurotomyとpapillotomyを行った.術後の心エコーでは全例においてVmaxは1.5m/s以下でMSは十分に解除された.症例 3 を術後LOSで失ったものの,ほかの 3 例では術後経過中にMSの増悪を認めていない.【まとめ】CMSの 4 例に対して手術を施行した.重症な心合併奇形の 1 例を失ったが全例において人工弁を用いることなく十分なMSの解除がなされたことから症状が増悪する前に手術を施行すべきと思われた.また形成術後の弁組織は正常とはいえず,特にparachute mitral valveでは弁尖,弁下病変の注意深い観察が必要であると思われた.

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