P-I-76
肺動脈弁欠損(PVA)症例の外科治療―病態に応じた術式選択―
大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科1),小児循環器科2)
石丸和彦1),岸本英文1),川田博昭1),盤井成光1),齋藤哲也1),萱谷 太2),稲村 昇2),北 知子2),河津由紀子2),青木寿明2),石田秀和2)

【目的】肺動脈弁欠損症例の病態に応じた外科治療の検討.【対象】1991~2006年当院での外科治療を施行した 5 例(右室低形成例を除く)で,術前症状がないか,認めても軽度の 2 例(TOF 1 例:症例 1,DORV 1 例:症例 2),術前PDAによる循環不全を呈した 1 例(TOF + PDA:症例 3),術前人工呼吸管理を要した 2 例(TOF 1 例:症例 4,SV + TGA 1 例:症例 5).【初回手術】手術時年齢は,症例 1,2 は54日~2 歳,術前重症度の高い症例 3,4,5 は,2 ~42日であった.術式は,全例体外循環下で肺動脈縫縮術を行い,同時に症例 1,2:1 弁付きパッチでの右室流出路再建(RVOTR)+ VSD閉鎖,症例 3:1 弁付きパッチでの右室流出路再建(RVOTR)+ PDA離断(VSDは閉鎖せず),症例 4:VSD閉鎖 + 弁付き導管によるRVOTR,症例 5 は肺動脈縫縮術のみ施行.【結果】肺動脈縫縮前後の平均主肺動脈径(% of normal)は右293→173,左234→197であった.遠隔期予後は,症例 1,2 は,再手術なく術後 5~6.3年で生存.症例 3 は2.5年後,二期的VSD閉鎖 + 右肺動脈形成 + re-RVOTR施行し,術後7.5年で生存.症例 4 は,術前のLVEDVが正常比72%と左室低形成に加え,術後気管支狭窄が残存し,2.6年後呼吸不全で死亡.症例 5 は,末梢肺動脈拡張が残存し,3 カ月後,右側開胸下でさらに末梢の右肺動脈上葉枝を縫縮,右気管支に外ステント留置を追加し,気管支狭窄は改善.その 1 カ月後(生後 4 カ月)Glenn + 肺動脈幹結紮術を行い,現在術後 3 カ月外来通院中である.【まとめ】PVAの術前の重症度は多様で,確実な肺動脈縫縮術を基本として,病態に応じた手術術式の選択が重要である.

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