P-I-77
再手術を要したVSD(I)&Valsalva洞動脈瘤症例の検討
名古屋大学心臓外科
六鹿雅登,上田裕一,碓氷章彦,秋田利明,成田裕司,横手 淳,長谷川広樹

【はじめに】Valsalva洞動脈瘤は,先天性心疾患のなかでもまれな疾患である.多くの症例は,肺動脈弁下型心室中隔欠損〔VSD(I)〕に合併しており,幼少期以降に瘤を形成して,成人期に破裂を来すとされる.【対象】当院で過去10年間に経験したVSDを合併したValsalva洞動脈瘤症例のうち,再手術を要した 5 例につき検討した.初回手術時にValsalva洞動脈瘤破裂を認めたのは 4 例であり,その 4 例には修復術を施行した.初回手術時年齢は,3~46歳(平均19歳)であった.【再手術術式】再手術時年齢は,5~62歳(平均36歳),再手術までの観察期間は,1.6~35年(平均18年)であり,再手術回数は 2~4 回(平均2.6回)であった.その要因は大動脈弁閉鎖不全(AI)3 例,Valsalva洞動脈瘤破裂 + AI 1 例,AI + 僧帽弁閉鎖不全 + Valsalva洞拡張 1 例であった.術式の内訳は,大動脈弁置換術 2 例,大動脈弁形成術 2 例,Bentall手術 1 例,Konno手術 1 例であった.なお,Bentallの 1 例は,観察期間中に僧帽弁形成術,その後に僧帽弁置換術を施行した.【考察】当院での症例は,初回手術時年齢が遅く,4 歳時の 1 例を除いて 3 例は10歳以降にValsalva洞の破裂を認め,手術を要したものであった.破裂症例 4 例のうち 3 例は,遠隔期のValsalva洞拡張を認めなかったが,1 例のみ修復後35年後(最長観察例)にValsalva洞拡張を来し,最終的には大動脈基部置換を要した.また,全例観察期間中にAIを合併しており,初回手術から大動脈弁置換術もしくは大動脈弁形成術までの期間は,1.6~22.9年(平均13年)であった.今回の検討で初回手術時年齢が再手術に大きく影響していると考えられるが,AIの合併は高頻度に発生しており,またValsalva洞破裂がパッチで修復されていても,術後長期遠隔期に瘤化する症例もあり,成人になって後もAIの悪化,Valsalva洞拡張を念頭に,注意深く観察する必要があると考えられた.

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