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術後難治性乳び胸に胸腔腹腔シャントを留置し有効であった 1 例
日本赤十字社医療センター小児科1),新生児科2),心臓血管外科3),千葉県こども病院循環器科4)
本間 順1, 4),小林城太郎3),金子幸裕3),与田仁志2),土屋恵司1)

【症例】房室中隔欠損,右室低形成,動脈管開存,肺高血圧を伴った21トリソミーの男児.3 カ月時PA banding,PDA ligation施行,術後心嚢水貯留,aspirin,prednisolone試みたが改善せず,術後 2 カ月で自然消退.1 歳10カ月TCPC,PA plasty施行.術後経過良好であったが,両側胸水貯留あり胸腔ドレーンを留置.胸水は乳びであり,脂肪制限,胸腔ドレナージ,enalapril,beraprost内服を行ったが,不応.術後30日胸腔リンパ管結紮術施行.術後胸水減少あり,脂肪制限解除し,TCPC術後46日退院となった.外来フォロー中胸水貯留なかったが,術後74日両側胸水著明に貯留,呼吸障害を伴い緊急入院となった.両側胸腔ドレナージ施行し呼吸障害改善.胸水細胞診では99%リンパ球で,乳び胸再発と診断.保存的に経過を観察したが改善せず.術後97日octreotide(1.1μg/kg/時間)開始したが不応.術後164日右心カテ施行.静脈圧13mmHgと明らかな上昇なく,静脈系の造影にても狭窄を認めなかった.経過中低蛋白血症と繰り返す全身感染症を認めたため,術後198日全麻下で左右に逆流防止弁付き胸腔腹腔シャント挿入.以後,全身状態の改善を認めoctreotide漸減中止,退院予定.【考按】乳び胸水では,ドレナージを行い,禁食や脂肪制限を行う治療が一般的である.しかし,長期間になると,脂肪制限による低栄養,ドレナージによるリンパ球低下,低蛋白血症などにより易感染性が問題になる.本症例でも,細菌性ドレーン感染 2 回,真菌性ドレーン感染からカンジダ敗血症合併を 1 回,末梢点滴刺入部感染からMRSA敗血症合併を 1 回と生命にかかわる合併症を伴っている.また,管理中,ドレーン閉塞,感染に伴う差し替えを左 7 回,右 6 回行っており,児への著しいストレスを強いた.術後狭窄や著しい静脈圧上昇がない症例で内科的治療やリンパ管結紮術に不応の難治性乳び胸水の症例では,胸腔腹腔シャントは有用な治療法と思われた.

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